お悩み相談室13: 小指が弱くて弾きにくいのですが…その2
こんにちは、リトピです。
さて、今回の「お悩み相談室」の内容はこちら。
悩み13: 小指が弱くて弾きにくい-part2-
以前、記事「お悩み相談室1: 薬指、小指が弱くて弾きにくいのですが…」でも取り上げたこの悩み、まだまだ多いようです。前回同様、これは初心者に限らず、ピアノ奏者なら誰しもが悩むトピックだと思います。 今回は小指に特化したお話。
やっぱり小指は弱い指?
小指は普段使わない?
「小指が弱いのは、日常生活で普段使わないから」という考えを持つ人が多いと思います。確かに、物を掴むときなどは、小指なんかよりも、親指・人差し指・中指あたりをよく使う…ような気がしますよね。それに、小指は他の指に比べて細いし、筋力も相当ないんでしょうね…
そういえば…ティーカップを持ったり、マイクを持ったりするときも、小指が立ってしまっている人(わざわざ小指を立てている人?)がいますよね。それも、小指が普段から使われていない証拠…なのでしょうか?
図1. マイクを持つと小指が立ってしまう。それは普段使わない・必要のない指だから? |
小指は弱い指。だからトレーニングが必要?
「日常生活で小指を使わない。だから、小指は弱いんだ。」「弱い指である小指でも他の指と同じようにピアノを弾けるようにするために、特別にトレーニングしなければ!」と考える人は多いでしょう。
実際、ピアノ上達方法として「指を鍛えよう」と指導する先生や、それを謳う書籍(例: ピアノ脱力奏法ガイドブック)やウェブサイト・ブログがあります。
そう考えると…やはり、小指は「普段から使っていない」【弱い指】であり、鍛える必要がある…のでしょうか?
「小指が弱い」と嘆くのはアナタの勘違い!!
なぜ、ヤクザは「小指」を落とすのか
さて、ちょっとピアノから離れますが、この点について考えてみましょう。なぜ、ヤクザは「小指」を落とすのでしょうか?
けじめ、という観点で指詰めをするのであれば、落とされる指は当然【強い指】のはず。。。だって、落とされる指が【弱い指】だったら、けじめとしての意味があまりないでしょう?
もしここで、我々の考えである「小指が弱い」が正しいとすると…本来けじめとして落とされる指は、小指以外、例えば「親指」や「人差し指」になるはずでは??…
ここが我々の勘違い。実は、小指は…
力を入れるにあたり最も大切な場所…ということなんです。つまり、小指がないと力が入らないってこと。ね、小指って全然「弱い指」じゃないでしょ?むしろ、上記の内容を考えると、小指は【強い指】と言えるでしょう。
(中略)
小指がないとこぶしを握る力が半減してしまいます
引用元: ココロスキップ, 裏社会!小指を切断するのは何故ですか?
えっ、「オレ・私はヤクザじゃないから関係ない」だって??
日常でも小指はよく使う
本来であれば、日常でも小指はよく使うんです。それにアナタは気付いていないだけ。
試しに、小指をがっちりテーピングして、まったく動かないようにして、日常生活をしてみてください。
図2. 小指にテーピングしたまま、日常生活してみよう |
その状態でいろんな物を握り込むとき、恐らく、ここ(身体のズレを"0"にする整体 脱力集中整体, 人差し指より、小指が大事。)や、ここ(整体院ゆじゅ, モノの握り方で肩こりになる|意外な肩こりの原因)と同じような感覚を覚えるでしょう。
図2の状態で生活してみることで、小指は、日常生活の中でしっかりと【使われている】ということが体感できたと思います。「小指が弱いのは、日常生活で普段使わないから」と言う・考える人は、もしかしたら小指の使い方が悪い(= 悪い癖を持っている)のかもしれません。自覚しましょう。
実際、小指を意識して、手を使う動作を行うと、その動作がより楽になったり、より安定したりするんです。ぜひ、今からでも試してみましょう(例: 健康理論, 小指を意識すると、あらゆる日常動作に良い影響を与える)。
また、アプローチ整体院ブログ, 【正しい身体の使い方】一番強い指は小指!によれば…
小指の方が弱いと思っていると、スポーツや武道の場面ではミスを犯す事になりやすいでしょう。…だそうです。そういう観点からも、小指は決して「弱い指」ではない、ということがご理解いただけると思います。
親指は独立していますので、体幹との連動性もよくありません。
なぜ、小指は【強い指】と呼べるの?
答えは、解剖学に…
小指が強い指だと言える理由は【小指が上腕の軸側だから】です。記事「お悩み相談室3: 速いパッセージが弾けないのですが…」でも取り上げましたが、上腕の軸は、小指側にあるんです。
図3. 尺骨と呼ばれる部分が上腕の軸の骨。軸側にある指は【強い指】と呼べる |
実は、「小指を意識して、手を使う動作を行うと、その動作がより楽になったり、より安定したりする」という理由はココにあります。小指という軸側の指を使うことで、動作時の腕全体のブレが少なくなるので、その動作がより安定します。そして、より安定した動作は、楽に感じる、というわけです。
あらゆる手・腕の動作の良し悪しは、小指(側にある尺骨)を意識するかどうかで決まる、と言っても過言ではないかもしれませんね(例: Walk in the Spirit, 手・腕は小指と尺骨を軸にして動く、小指入水のなぞが解けた)。
実は、他にも、小指は【強い指】と謳っているサイトもあります(例: ピアニストのためのアレクサンダー・テクニーク, 小指は強い指?!)。
その他に、「小指が弱い」と感じるのは、小指の折り曲げ位置(= 関節)を勘違いしているからだ、というお話もあります(参考: 腕と手のうごきレッスン, 小指が弱い!と思った時に気をつけたいこと)。こういった解剖学的な内容を理解しておくと、「小指が弱い」などという勘違いがなくなります。
「筋トレ」はいらない
さて、上記の内容から、小指は決して「弱い指」ではない、ということがわかってきたと思いますが…
親指や人差し指と比べて、小指が動かしにくいのを「筋力がないせいだ!」と思う人は、まだ少なくはないようです。でもちょっと待って。
ピアノの鍵盤の重さ(もとい、下げるために必要な力)は、約50 g(を持ち上げる力と同じ)です(記事: 鍵盤が重いと感じる理由とその改善案1)。この重さを小指で支えられなければ鍛える必要があります。。。うーん、「指を鍛えろ!」と言っている人は、どんだけ力がない人なのでしょうか。。。
ただ、小指は、親指や人差し指と比べて、「俊敏性」がないのは確かです。ただし、ここで「俊敏性がない = 弱い指」と考えるのは、上記の内容を考慮すると、それは「浅はか」だと言えるでしょう。
鍛えるべきは「筋肉」ではなく【脳】
実際、指が動かしにくいのは、「筋力がない」からではなく、ピアノ用に動かすための【神経が発達していない】からなんです。
要は、指を速く動かせるようにするには、「筋力」ではなく【神経細胞の数】の多さが必要です。これは、一朝一夕では多くなりませんので、地道にピアノの上で指を動かす練習を重ねるしかありません(実はイメトレだけでもそれなりの練習になる)。これは「急がば回れ」ということなのでしょう。
つまり、鍛えるべきは「筋肉」ではなく【脳(の指令、指の正しい使い方)】です。残念ながら近道なんてものは存在しません。これは小指以外の指も同じ。もう、小指は「弱い指」などという差別(?)は捨てて、どの指も大事に扱って、地道に練習を重ねていきましょう。そうすれば、おのずと小指を含む指の俊敏性・正確性が高まってきます。
まとめ
小指は【強い指】!
今回のまとめを以下に示します。
- 「小指は弱い指」というのは大きな勘違いである
- 小指は日常でよく使う指。ただそれに気付いていないだけ
- 本当に、日常生活で小指を使っていないなら…
→ 自分は【悪い癖】を持っている、と自覚すること - 鍛えるべきは「筋肉」ではなく【脳】である
補足: なぜマイクを持つときに小指を立てるのか
小指を利用するおかげで物を強く握ることができる、ということがわかったと思います。これはその逆で、あえて小指を立てておくことで、【握る力を抑えている】(= 力を入れたくても入れられない状態を作っている)と考えられます(参考: あれこれやそれこれ, オネエの小指は自然に立つのか立てるのか)。
ここでも、小指が【強い指】である所以が見られますね。
では
0 件のコメント :
コメントを投稿