理系ピアノ奏者におすすめの書籍10: ピアノ・テクニックの科学

公開日: 2016年10月23日日曜日 ピアノ 書籍

(更新: 2017/02/08←本書の著者と下記掲示板および、メールで対談しました。)

こんにちは、リトピです。

こちらは、理系である私がおすすめする書籍をご紹介するコーナーです。 今回ご紹介する10冊目はこちら。

まず、この書籍は…書籍『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』を読まれて、「人間の身体の構造は分かったけど…じゃ、ピアノを弾くときはどうすればいいの?」と悩んでいる方々に非常にオススメの書籍です。…というか、その書籍を読んでからじゃないと、この書籍を理解するのは非常に難しいです。この書籍に興味のある方は、まずそちらの書籍を熟読することをオススメします。

本書の内容ですが、これは(ある一部を除いて)非常に素晴らしいです。これこそ「理系ピアノ奏者におすすめ」と言える書籍。理系ピアノ奏者なら、このタイトルに惹かれること間違いなし!

この書籍は、間違った考えによる誤った奏法はどんなものなのか、それを正すためにはどういう風に考えなければならないのか、が(ある一部を除いて)非常に明確に書かれています。著者…というかこの書籍の内容の基になっている論文を書かれたアンスガー・ヤンケ氏はとても研究熱心…だけでなく、教育に対しても熱い心を持っていたようです。たくさんの生徒にピアノを教えている全教師は、彼の意思を継ぐべきです。

それはさておき。この書籍、「身体構造」「重力」「動き」という側面からピアノのテクニックを見ていて、【解剖学】的な話が盛りだくさんです。その医学的な内容を監修しているのが、あの書籍『ピアノを弾く手』の著者である酒井先生。その書籍同様、医学的な部分は、誤解のないような書き方、言葉をキチンと選んでいると感じる書き方が多いです。そりゃ、良本になりますよ。

この書籍を読んで、特に目から鱗だったものはこちら。

やはり「脱力」「指の独立」「ゆっくり練習」「反復練習」はダメ
書籍では、なぜそれらがダメなのかが明確に書かれています。以下にいくつかご紹介します。
  1. ピアノを弾くときは「脱力」ではなく、【重力に逆らって維持するのに必要な筋肉】(腕などの支え)を意識することが必要。
    ピアノを弾くための腕の体勢を重力に逆らって維持するのに必要な筋肉の静的な緊張は、決して弱いものではない。この静的な緊張は、鍵盤を打鍵する際にはどちらかというと高まる。(p.60)
  2. 必要なのは「独立」ではなく、【指が互いにしっかりとつながっていること】を意識する。
    指が互いにしっかりとつながっていることには意味があり、積極的に動かすことができる第5指の中手骨が中手を安定させるのに大きく貢献しているからである。弛緩しすぎることは、手の全体的なフォームの安定性を阻むことにもなる。(p.50)
  3. 単なる繰り返しは、悪い癖を身につけてしまう。
    「知的な作業なしに、オートマティックにただ繰り返して行う練習」は効果が得られないばかりでなく、「間違った緊張や運動を学習してしまうことで、それを癖にしてしまう」というふうに技術の向上を逆行させてしまう誤った練習方法である。(p.231)
  4. 「ゆっくり練習」は問題の性質を変えてしまう。(詳細は記事「「ゆっくり弾くこと」の罠3: 速く弾くためには「速く弾く練習」が必要」を参照)
    【腕を横に振動させる動き】は腕の「振動」を利用したテクニックなので、大幅に遅いテンポでは「ゆっくりと腕を回転させる」といったように誤った動きで練習を行ってしまう危険がある。(p.151)

教師は正しい知識を持つために勉強すべき
適当なアドバイス、間違ったアドバイスは、生徒の上達を妨げるだけでなく、ケガさせてしまう恐れがあります。教師は、生徒が上手に弾けない時、「生徒のせい」にするのではなく、【自分の指導が間違っている】と自覚すべき。そのように考えられない教師は、以下のヤンケ氏の言葉を胸に刻み込みなさい。
単なる思い込みによる自説が次から次へとはびこっていたが、このような意見には筋の通った一貫性もない。(中略)まるで矛盾する助言で指導する、という馬鹿げた現状がある。このような教育現場に対して、ヤンケは批判している。(p.35注釈)
→ ホント、馬鹿げています。教師はそのような教育現場があることを自覚すべき。もしかしたら自分がそうしているかもしれませんよ。。。
さらに…
よい呼吸は座る姿勢を決定し、(中略)。誤った呼吸の最大の悪影響は、「肩甲帯からの腕の動きを損ねること」である。
(中略)
このようなことにさえ先生は全く気付かず、「力を抜きなさい、緊張をほぐしなさい」と忠告するだけである。(中略)このような助言だけでは解決にならない。(p.65)
→ そう、ただ「脱力」と言うだけでは何の解決にもなりません。そのような教育形態を見直してもらうことも、このブログの目的でもあります。
そして、極めつけは…
教師はこのような不当な方法で生徒に全責任を転嫁しているが、(中略)無責任なレッスンのやり方は、教師の無能さを語っている。(p.77)
→ できない生徒に、「なんでできないの!?」と声を荒げる(厳しさを美徳とする勘違い)教師は結構多いのではないでしょうか。でもそれ、アンタの責任ですからーーーー、残念っ!!!!
最後に…
「人生で最も柔軟な筋肉を持つ子供時代にこそ、正しいテクニックを適切に教えること」は教師の重大な課題であり、理想である。そのためには、教師自身が「正しいテクニックとは何であるか」という技術の本質を理解し、よいメソードを持っていなければならない。教師がこれを知らないままにピアノ教育に従事するような、無責任なレッスンのやり方で獲得した「自称テクニック」なるものは、単に勤勉に、繰り返し練習することで習得したものであり、そのレヴェルには限界がある。(p.183)
→ ピアノに関係なく、生徒に何かを教えるという業務を持つ全教師が必読し理解すべき部分です。アナタ方は、教師という仕事をして、お金をもらっているわけですから、正しい知識をもつために勉強しなさい、アナタ方の持つ生徒たちのために。

ピアノ演奏はやっぱり身体のコーディネートが大事
これは、書籍『シャンドール ピアノ教本』のキーワードでしたね。ここでもそれが感じられます。例えば以下の部分とか。この書籍で学ぶべきポイントは、ピアノの動き全般は、肩の動きから始まり他の部分を【受動的に】動かしている、という点です。
ピアノ演奏は上腕、前腕、手、指が一体となる複合的な動きで考えなければならない。肩関節に始まる効率的な運動の伝達が演奏の質と音響を決定する。(p.207)

弾き方・練習の仕方の説明が秀逸
ここら辺は本書の核心部分なので、ご自身の目で確かめてください。ちなみに、ミスに対しての考え方も秀逸です。これは書籍『ミスタッチを恐れるな』の概念を超えているかも。
「舞台上ではミスは起こらない、と精神を理想化して本番に臨め」(p.159)

テクニックと音楽表現は分離できない
これは、本書のメインと言える部分でしょう。本書のおびには「テクニックは、テクニックそのものから解放されるためにこそ必要である」と書かれておりますが、まさにその通り。ただ…そうやってテクニックばかりに固執していると、よく「テクニックにはしりやがって…」と非難する人がいます。そんな人にはこの言葉を差し上げましょう。
テクニックの不手際は作品を損ない、芸術的な全体像を壊す。テクニックに傾きすぎることをしばしば非難されるが、では、他にどういった選択肢があるのだろうか。
(中略)
動きに変換させないのであれば、感性も思考も響きのある現象となっては現れず、個人的な領域に留まって聴衆に本物の反応を呼び起こすことはない。(p.84)
→ それでもアナタは、まだ「テクニックにはしりやがって…」と非難し続けますか?

まだまだこの書籍から学んだことはたくさんあるので、ご紹介していきたいのですが、今回はこの辺で。

今回の書籍も、前回ご紹介した書籍『自分の音で奏でよう!』にあるように、私の言いたいことがたくさんちりばめられているように感じました。最近、どうなってるんだっ?(笑)

以下の部分なんか記事「特集7: 「ゆっくり弾く練習」は速く弾くために有効か」とソックリ!。

「感覚のフィードバックによってコントロールされたことが、運動の質に影響を与えて、運動の流れの習得や修正を可能にする」という脳科学の視点に立ったレッスンの方針は、どのような学生に通用するものであった。(p.173)
やっぱり、理系目線で(不変の原理原則から)物事を考えると、誰もが同じような結論に至るのでしょうか。このような書籍が増えることを願っております。

訂正とお詫び(更新: 2017/02/08)

本書の著者と下記掲示板および、メールで対談しました。著者からのご丁寧な説明・解説をいただいたところ…初期に書いた私の以下の内容は、私の勘違いによるものだった、というのが発覚しました。後ほど書き直します(自分への戒めのため(?)当面はグレーアウト&小さい文字で掲載しておきます)。

著者様、お忙しいところ、一読者の身勝手な疑問点にご丁寧にご対応してくださって、誠にありがとうございました。

問題点【指を立てる動作】

最初の方で「ある一部を除いて」という記述をしましたが、この書籍にも問題点があるとすれば1点。それは【指を立てる動作】に関する記述全般です。これだけは唯一、この著者(というかヤンケ氏)でさえ…

「間違った奏法での動き」と「不適切な手や腕と筋肉」を指摘しているにもかかわらず、巧妙な筋肉の動かし方の例として、その考察とは矛盾…(p.181)
していると、彼に指摘したい。恐らく、著者(というかヤンケ氏)でさえ、
自分の指や腕がどのように動いて機能しているのかを説明できない(p.153)
部分があったのでしょう。

【指だけ】で腕を支えるのは不可能 or 至難の業では…?

本書では、ピアノを弾く方法の一つとして挙げている【指を立てる動作】を以下のように説明しています。

指関節を適切に固定させることによって腕の重みを支えることがこの項のテーマである【指を立てる動作】の重要なキーポイント(p.94)

ヤンケは、「強い指」は練習曲を繰り返すことによってつくられるものではなく、「指の関節を適度に固定させる訓練をすることによって初めて作られる」と述べている。(p.95)

彼の言う「指の強さ」とは、腕全重量を支えることのできる能力、つまり関節の固定を適切に調整できる力であり、…(p.97)
ここだけ、内容があの書籍『ピアノ脱力奏法ガイドブック 1』と被っています。私の記事「なぜ「脱力」は敵なのか5: 身体は鍛えるな。感覚を鍛えろ。」でご説明したように、人間の腕は、その人の体重を50 kgとすると、約3 kgあります。これはボーリングの玉とほぼ同じ重さ。これを【指だけ】で支えろと…?

ヤンケ氏はこれまでに、さんざん身体の「コーディネート」(指だけでなく肩・腕を使え)と言っているのに、なぜここだけ【指だけ】にこだわるのか?とても矛盾していると感じています。

特に、以下の文章は最悪。

指を固定させても腕は弛緩したままの状態を保たなければならない。つまり、生徒は自分の腕の重量を指1本で支えなければならないわけで、腕の全重量が指にのしかかっても指が崩れ落ちないためには、固定することが必須となる。(p.104)
何度も言います。「腕の全重量 = 約 3kg = ボーリングの玉とほぼ同じ重さ」です。それ、本当に【指1本】で支えられるんですか?しかも…
指の固定には、関節にある靭帯も関与する。(p.104)
…えっと、また靭帯!?記事「お悩み相談室6: 指の関節が弱いのですが…」でお話ししたように、靭帯はコラーゲンが主な成分なので、指の剛性を担う部分だとは思いますが、腕の全重量(約3 kg)に耐えられるほどの能力はないのでは?さらに…
「指を固定する」ことと「力を入れる」ことは、同義ではない。(p.105)
うーん…ここ、めっちゃ矛盾していませんか?古屋先生の書かれた記事「ピアニストのための脳と身体の教科書: 第07回 「力み」を正しく理解する (1)力み(りきみ)とは何か?」によれば、関節の固定は、筋肉の同時収縮で可能です。何か、ここら辺はヤンケ氏が迷走しているように思えます。

さらに、音階を指で弾く部分の説明はもっとヒドイ。

次の音を打鍵した後は即座に腕の重量を移して安定させ、指を支柱とした【手のフォーム】を崩さないように注意する。(p.121)

最初の1音は鍵盤に指を立てて固定させ、腕の重量を支える。打鍵の後は素早く弛緩して腕の重みを次の指(音)に移し替え、【指を立てる動き】を行う。(p.124)
要は、歩くような動きでピアノを弾け、ということでしょうか。もしそうだとすると…私の記事「お悩み相談室3: 速いパッセージが弾けないのですが…」で話した通り、移動した指には、腕の重さの2.6倍である7.8 kg~3.5倍の10.5 kgかかります。その腕の重さ、本当に【指だけ】で支えられるんですか?これらの点に関してははなはだ疑問です。。。

どうした、ヤンケ氏!?

いや、もしかしたら…ヤンケ氏はあれだけ熱心に研究を重ね、たくさんの生徒を指導し、論文を作成してきたのだから、どこの馬の骨かわからない 私 リトピ のチンケな考察なんかよりヤンケ氏の方が正しいかもしれない!…と思いたいのですが、よく考えてみてください。

たとえ、指が(力を使わずに)腕の全重量を支えられるようになったとしても、それは意味がないです。なぜなら…

指を固定させ、腕の全重量を【指だけで】支える → 腕の重さが指を介して鍵盤に伝わる → 結果として打鍵後も鍵盤を押し続ける = ダメな弾き方

…という結果が容易に推測できてしまいます(弾き方の詳細は記事「番外編7: プロと初心者の「打鍵の仕方」の違い」を参照)。しかも、この【指を立てる動作】は、ヤンケ氏が強く説明している以下のセリフと矛盾しています。

指だけに頼るテクニックには事実上、筋肉の余計な緊張が伴い、演奏に限界をきたす。(p.153)
→ そう、【指を立てる動作】という指だけに頼るテクニックは、筋肉の余計な緊張を伴うので、演奏に限界をきたします。さらに…
現代のピアノのメカニズムでは、音色や強弱を決めるのは打鍵の瞬間のみであり、打鍵の速度やニュアンスが表現のすべてを決定する。(p.202)
→ つまり、打鍵の後に何をしても意味はない、ということです。それは、【指を立てる動作】という、打鍵後に鍵盤に指を突っ伏して固定させ、腕の全重量を支えるような弾き方に意味はない、と言っているのと同義ではないだろうか?

(当然、空中や下がりきっていない鍵盤上に指がある場合には、指を固定させ腕の全重量を支える、という状態にはならない。その状態を作るには、指先が地について(土台となる鍵盤側が底に着いて)いなければならない。つまり、この【指を立てる動作】の状態は打鍵後にしか作られない。)

大事なのは、やはり身体全体の【コーディネート】

その他の部分でのヤンケ氏の考察は目を見張るものがあります。この書籍で書かれていることは、ほぼすべて、書籍『ピアニストの脳を科学する』の著者である古屋先生の研究結果と同じです。しかも、それが明確に書かれていることが素晴らしい。

例えば、【腕を縦に振動させる動き】は高速和音打鍵の動作[1]そのものだし、【腕を横に振動させる動き】では、古屋先生の研究結果を超えていて、トレモロは、前腕を回転する動き[2]を、前腕を回転させる筋肉で「能動的に」…、ではなく、肩の動きを利用して、前腕の回転動作を【受動的に】生み出せ、と述べています。この方が、より強い筋肉を利用することになるので、とても楽に演奏できるようになります。

[1] 記事「番外編4: 「脱力」で、高速和音打鍵は絶対に出来ない」を参照
[2] 記事「お悩み相談室3: 速いパッセージが弾けないのですが…」を参照

つまり、ヤンケ氏が本当に言いたいことは…やるべきことは弱い筋肉を持つ部位(主に指)に動きを任せるのではなく、より強い筋肉を持つ上腕・肩に動きの動力を利用して、弱い筋肉側の動作を助けるという【コーディネート】が大事、ということ…だと思っています。

では。

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4 件のコメント :

  1. 拙著を読んで頂き、高く評価をしていただきましたことを心から感謝申し上げます。後書きにも書かせていただきましたが、動きのあるテクニックを文章で解説することには限界があり、問題点とご指摘いただきました「指を立てる動作」「指を固定する」etcには少々の誤解があるようです。このあたりはピアノの前で直接説明をさせていただければきっとご理解いただけると思うのですが、今後、セミナー等の機会を設け、ヤンケのメソードに興味を持って下さった方とご一緒に勉強を続けていきたい所存です。今後もご意見を頂きながら、運よく重版になりました際にはより明確な解説を試みますので、どうぞよろしくお願いいたします。著者より。

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    1. コメントありがとうございます。本書は、(恐らく)今までにない試み・視点で「誰にとっても正しいピアノ奏法とは何か?」を【論理的に】追求しているというところに、理系である私は心をひかれました。今後、このような素晴らしい書籍が増えれば…と願っております。

      ピアノ演奏に関して文章ですべてを表すのに限界があることは重々承知しております。私も、稚拙ながら本ブログでピアノ奏法に関しての記事を書く際に大変苦労しております。

      ただ、本ブログのスタンスとして「○○という言葉・アドバイスを、(その真意に気付けず、)もし言葉通りに受け取ってしまったら…どういう結果になってしまうのか?」を追求しているため、後半はそのような内容で記事を書かせていただきました。その点、ご容赦いただければと思います。

      その本書の「指」に関する記述について、当記事では批判させていただきましたが、それは上記スタンスのため。誤解であることは重々理解しております。ただ、「指を立てる・固定する」という言葉を鵜呑みにしてしまうと、当記事のような(間違った)解釈をしてしまう人が多いのでは?…と、私は推測しております。素人目で見て・読んで、矛盾のように感じた記述もいくつかありましたので。。。

      是非、一度機会があればセミナー等に参加させていただければと思います。個人的には…この書籍は、ピアノを愛する全ての人に、特に生徒を抱えるピアノ教師や、音楽学校・大学の先生に絶対に読んでほしい書籍トップ3に入ると考えています。本書籍から、ヤンケ氏の指導に対する熱い思いが伝わってきて、正直身体が震えました。


      長い返信になってしまいましたが…
      この世に、素晴らしい書籍をご執筆・ご発行してくださったことに大変感謝いたします。より明快な解説が載せられた重版、大変楽しみにしております。


      P.S.
      当記事で、本書籍について、大変おこがましいお話をしてしまい、大変申し訳ございませんでした。でもそれはこの書籍への愛ゆえ。コメントありがとうございました。こちらこそ、よろしくお願い申し上げます。

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    2. 貴重なご意見をありがとうございます。「動き」を文章で書くことの限界、と言い訳をしましても、本を書く以上、読者にキチンと伝わらなければならない、と反省しております。昨夜、このテーマをずっと考えておりましたが、もしかしたら「指を固定する」ではなく、「関節を固定する」と表現した方がより近かったかもわかりません。ドイツ語ではfixierenという言葉を使っていますが、指であれ、関節であれ、フィックスする際に筋肉の力で固定させるわけではありません。ピアノを弾く以上、筋力を全く使わないわけにはいかないのですが、如何に無駄な筋力の使い方をやめ、筋力は必要最小限に抑えて、身体の構造と重力に従った1番効率的な状態を最初に実現しよう、というのがヤンケの大きなテーマです。
      演奏家の映像を見ました時に、この指の状態を実現させ、いかに無理なくピアノを弾いているかどうかは、映像を一瞥すれば区別がつきますが、世界的に有名な演奏家でさえ、皆が実現させているわけではありません。子供の頃に無理な演奏法の習慣が身についてしまい、大人になってもこれを改めないままに演奏を続けているクラシックの奏者はまだまだたくさん居ますが、むしろ、身体に自然体で無理強いをしない演奏をしているジャスピアニストの方に多く良い例を見ます。2~3の文章ではなかなか解説しきれないのですが、よろしければjankemethode@gmail.com にメールをください。このように熱心に読んで下った読者とキチンと向き合わせていただければ幸いです。あまり更新をしていませんが、www.jankemethode.com もご覧ください。著者

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    3. ご返信ありがとうございます。
      「身体の構造と重力に従った1番効率的な状態」に関して、その考え方にとても共感を持っております。これは【ロルフィング】などと呼ばれるボディーワークの考え方に非常に似ていて、非常に合理的な考え方だと感じました。もっと言えば…個人的には、それ以外の考え方(身体の構造や重力を無視・考慮しない考え方)でピアノ奏法を語るのは非常にナンセンスだと思っています。

      その他、詳細につきましては、後ほどメールを送らせていただければと思います。Webのご紹介ありがとうございます。こちらも後ほど拝見させていただきます。

      よろしくお願いいたします。

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