番外編3: 打鍵後は、鍵盤を押さえつけておく必要なし

公開日: 2016年9月10日土曜日 ピアノ 重力奏法 脱力

こんにちは、リトピです。

ピアノの打鍵の極意として「1. 打鍵時に、力を入れる」「2. 打鍵後は、スグ力を抜く」「3. 打鍵後は、鍵盤を押さえておく力を残す」と言っている人は多いと思います。でも、プロと初心者の「打鍵の仕方」を見ると、1, 2は間違い、しかも初心者のダメな「打鍵の仕方」そのものであることがわかりました(詳細は記事「番外編8: プロと初心者の「打鍵の仕方」の違い~簡易版~」を参照)。

残りの一つ「3. 打鍵後は鍵盤を押さえておく力を残す」は、「腕の重さを鍵盤・指にかけておく」なんて言われたりもしますね。はたしてこれらのアドバイスは正しいのでしょうか、それとも…?というのが今回のお話。

鍵盤が元の位置に戻る力について追記あり(2016/09/27)

アナタは「3tトラック」を動かせますか?

この「3. 打鍵後は鍵盤を押さえておく力を残す」というアドバイスで厄介なのは、「2. 打鍵後はスグ力を抜く」と矛盾していることです。ここで一部の「脱力」信者は、それの反論として「力を抜く = ゼロにする、じゃないから」などと言いますが…じゃ、打鍵後はどこにどれくらい力を入れておくべきなの?抜いておくべきなの?と聞きたくなります。

それに対する回答は…残念ながら、今のところ見当たらないようなので、こちらで独自に調べてみます。

今回は、非常に簡単にまとめます。そのため、事実とは異なる部分があるかもしれませんが、ご容赦いただければと思います。

打鍵後の状況

打鍵後に、鍵盤を押さつけておかなかった場合、以下の図のような状態になるでしょう。

図1. 腕は、打鍵後の恰好のまま、静止させていた場合。Fkeyは、鍵盤が元の位置に戻ろうとする力。

そのため、「3. 打鍵後は鍵盤を押さえておく力を残す」というアドバイスをする人は、この「鍵盤が元の位置に戻ろうとする力」Fkeyに対抗する力だけを残しておけ、ということを、恐らく言っているのでしょう。

打鍵後の状況を別のものに例えてみる

でも…その「鍵盤が元の位置に戻ろうとする力」Fkeyって、わざわざ意識しなければならないほどのものなのか?というのが気になります。。。

なぜなら…(御幣を恐れず言えば)鍵盤の重さ50 gだと言われています(詳細は、記事「新ピアノ奏法2: 鍵盤が重いと感じる理由とその改善案1」を参照)。ここで、「鍵盤が元の位置に戻ろうとする力」はその重さ 50 gを持ち上げる力と同等だ、と定義しましょう。

また、体重50 kgの人間がピアノを弾くとすれば、その人の片腕全体の質量は約3 kgと推定されます(詳細は、記事「なぜ「脱力」は敵なのか5: 身体は鍛えるな。感覚を鍛えろ。」を参照)。

つまり…人間の片腕の重さは、鍵盤の重さの60倍です。いいですか、60倍ですよ(大事なので2度ry)。つまり、打鍵後は、鍵盤が「鍵盤が元の位置に戻ろうとする力」Fkeyを使って、自分の重さの60倍もある片腕を押そうとしている、という状況なんです。これはどういうことかと言うと…

例えば。鍵盤が自分(体重50 kgと仮定)だとすると、対する片腕は、3tトラックに相当します。また、打鍵後の「鍵盤が元の位置に戻ろうとする力」Fkeyは、静止している3tトラックに対し、「自分が3tトラックを押して動かそうとする力」Fに相当するでしょう。

図2. 50 kgの人間が、自分の体重の60倍もある3tトラックを押そうとした場合。3tトラックは静止中(ブレーキは踏んでない)。はたして動くかな?

想像していただければと思いますが…我々が3tトラックをどんなに頑張って押しても、全く動かない (or ちょっとずつしか動かせない)、という結果になるでしょう。このとき、びくともしない3tトラック側は、「3. 打鍵後は鍵盤を押さえておく力を残す」というアドバイスに沿って「自分が動かないように、人間が押してくる力Fに対抗する力を入れておこう」などと思っているでしょうか?

そんなわけありませんよね。3tトラックは、ただ静止しているだけです。これは、人間の60倍もの重さを持つ3tトラックは「3tトラックを押して動かそうとする力」Fを無視することができる、とも言えるでしょう。

実際は、作用・反作用の法則で、トラック側も我々を同じ大きさFで押し返してきますが、それはトラックの意思(?)とは関係ないです。逆に考えれば、静止しているだけで、その力Fに対抗する力が、作用・反作用の法則によって引き出される、とも言えるでしょう。(細かい話になると、抵抗力と力積が関係してきますが、ここでは割愛。参考: 「ぶつぶつ物理: 釘はなぜ打ち込めるのか? 力積、運動量そして運動エネルギー」)

まとめ

上記の例より、鍵盤の重さの60倍もある片腕は、ただ静止しているだけで十分だということがわかります。要は、打鍵後の「鍵盤が元の位置に戻ろうとする力」Fkeyは無視できる、というわけです。

つまり、ピアノの打鍵の極意として言われていた最後の一つ「3. 打鍵後は、鍵盤を押さえておく力を残す」は、気にする必要のない力をわざわざ意識させるという、非常に無駄なアドバイスであった、と考えられます。また、打鍵後の「鍵盤が元の位置に戻ろうとする力」Fkeyを無視できるということは、わざわざ「腕の重さを鍵盤・指にかける」必要もない、とも言えるでしょう。

追記: 鍵盤が元の位置に戻ろうとする力

(追記日: 2016/09/27)

鍵盤の重さはダウンウェイト(鍵盤を押し込むときに必要な重さ(力))だけでなくアップウェイト(鍵盤が元の位置に戻ろうとするのを押さえておくだけの重さ(力))というものがあることが判明しました。

-みんなの☆ピアノ選び- Piano For The Peopleの記事「ピアノのタッチが変?簡単セルフチェックを伝授!」によると、アップウェイトの目安は20 g未満(18 gくらい)のようです。

つまり、上記で説明した内容には間違いがありました。実際は…腕の重さは、鍵盤の(戻ろうとするのを押さえる)重さの150倍あるようです。

これは、人間の体重を50 kgにしたとき、7.5tトラックに相当することに。。。ははは…、鍵盤が戻ろうとする力なんて、腕全体の質量に比べたら大したことないですね。7.5tトラックと言えば、こんな大会があるみたいです。。。鍵盤は、こんな大会と違って、そんな必死に腕を持ち上げようとしないですからね。

では。

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