お悩み相談室12: 大きく手を広げたいのですが…
こんにちは、リトピです。
さて、今回の「お悩み相談室」の内容はこちら。
悩み12: 手を大きく広げたい
この悩み、特に手の小さい人、親指がマムシ指になってしまう人に多いようです。オクターブ練習などをすると少しずつ手を広げられるようになる…と思っている人もいると思いますが、練習前に必ず気にしなければならないことがあるんです。今回はそんなお話。
ダメな手の広げ方と正しい手の広げ方
手の広げ方によっては、親指側に力が入らず弱々しい打鍵になったり、しっかりした打鍵が可能になったりしますよね。さて…その差はどこにあるのでしょうか?図1の2つ状態を基に考えてみましょう。
図1. オクターブを弾こうとするときの(a)ダメな手の広げ方、(b)正しい手の広げ方。(a)では、親指の関節がへこんでおり、親指側の打鍵が弱々しくなってしまう。一方(b)では、親指の関節がしっかりしているので、打鍵も力強いものとなる。 |
親指の関節がへこんでしまう原因は?
ここで、上記図1aのような手の広げ方を見て「親指の関節が弱いのが原因。まずは鍛えなさい!」とか「オクターブの練習が足りないのが原因。とにかく練習しなさい!」というアドバイスをする方がたくさんいると思いますが…
まず、関節を鍛えるのは不可能だ、というのは記事「お悩み相談室6: 指の関節が弱いのですが…」でお話しした通り。また、たくさん練習をしたからといって、手の使い方の【イメージ】が悪ければ、どんなに練習を重ねても図1(a)の状態から、自然に図1(b)の状態に遷移することは絶対ない、と言っても過言ではないでしょう。
つまり、上記図1(a)と(b)の大きな違いは、関節の強さ・練習量の多さの違いではなく…その人が持つ【親指の広げ方のイメージ】の良し悪しだけ。自分の頭の中にある動作【イメージ】の内容が悪いと、いくら頑張っても良い結果は出ない…というのは記事「「包丁を扱う」ことからピアノ練習方法を学ぶ」でお話ししました。
これが、単に「手を広げる」という簡単な動作でも、人の持つ【親指の広げ方のイメージ】の違いで上記図1の(a)、(b)のような差が出てきます。そのため、上記図1(a)のようなダメな状態から(b)の正しい状態に持っていくためには、手を図1(a)のように広げてしまう【悪いイメージ】を払拭させる必要があります。
正しいイメージを持つ = 手の構造を正しく知る
【悪いイメージ】を払拭させ、正しいイメージを持つためには、手の構造を正しく知る必要があります。大抵の人は…親指の主な動きは、手の甲側を見たときの見た目で親指が生えている部分(MP関節、図2の黄色い部分)から始まると勘違いしています。
この勘違いをしている人は手を広げるとき…見た目で親指が生えている部分(MP関節、図2の黄色い部分)を曲げて親指を広げようとして(主に長母指伸筋を収縮させて)、手を無理やり広げようとします(図2(a))。そのせいで、その関節がへこみ、親指側の打鍵が弱々しくなってしまいます。
一方、正しいイメージは図2(b)です。実は、親指の主な動きは、もっと手前の手首側の部分(CMC関節、図2のオレンジ部分)から始まり、そこを曲げて親指を広げようとする(主に長母指外転筋を収縮させる)、というのが正しいイメージです。この正しいイメージを持たない限り、どんなに関節を鍛えようとも、どんなに練習を重ねようとも、この図2(b)のように手を広げることはできません。
図2. (a)ダメな手の広げ方をする人の持つ悪いイメージ、(b)正しい手の広げ方をする人の持つ正しいイメージ。各図の○は関節、青線は骨、オレンジ破線は親指側を広げるときのイメージ方向、赤線は筋肉(の腱)の始点と収縮方向を示す。 |
まとめ
ただ単に「手を広げる」という単純に見える動作でも、自身の持つ【イメージ】の良し悪しで、手の広げ方の良し悪しが決まってしまう、ということがわかりました。簡単にまとめると…
- ダメな手の広げ方のイメージ: 見た目で親指が生えている部分(MP関節)を曲げて手を広げようとする
- 正しい手の広げ方のイメージ: 実際に親指が生えている部分(CMC関節)を曲げて手を広げようとする
では
いつもブログを拝見しています!
返信削除リトピさんの解説とても好きです
応援してます!!
コメント & 毎度拝見してくださってありがとうございます。
削除更新が不定期かつ、かなりのスロースペースですが…これからも、通常とは違った視点で正しいピアノ奏法を明確にしていきたいと思います。
応援メッセージありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。