なぜ「脱力」は敵なのか6: まとめ ~打鍵後の「脱力」はダメ~
こんにちは、リトピです。
ここでは、「なぜ「脱力」は敵なのか」の総まとめと、今回の内容をピアノにちょっとだけ応用してみたいと思います。
「なぜ脱力は敵なのか」総まとめ
- 1. 敵である理由
- 第一、言葉の印象が良くない。
- 第二、「脱力」という言葉だけでは、どう演奏すればいいかわからない。
- 第三、演奏する際に必要不可欠な支えがある、ということが意識しにくい。
- 2. 脱力 (余分な力を抜く) は間違い
- 「脱力」という「余分な力を抜く」行為は、「動作する = 力を入れて行う」という本来のイメージからかけ離れすぎている。 動作そのものにフォーカスすべき。
- 3. 余分な力はなぜ発生するのか
- ここでは「脱力」信者への問題提議。
- 4. 脱力なんていらない
- 正しい動作ができていないせいで身体にかかる「負荷に対抗する力が発生= 間違った身体の使い方をしているという警告」ととらえることが大事。
- 5. 身体は鍛えるな。感覚を鍛えろ。
- 完全に「脱力」した腕を指だけで支えようとすると、人間をやめることに。。。 感じている抵抗力を警告ととらえ、正しい動作になるよう (抵抗力を感じなくなるよう)にすべき。
打鍵後の脱力はダメ
さて、これらまとめをピアノにちょっと絡めてみましょう。 ピアノ演奏で最も動作が少ないであろう打鍵後について考察です。
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図1: 打鍵後の姿勢。図中に書かれているFは何でしょう? |
ところで、地球上にいる限り、我々、いや地球上にあるすべての質量を持つ物体は、ある現象のせいである方向に引っ張られ続けているのをご存知ですか?
そう、重力です。 (地球での重力加速度: g = 9.8 m/s2)
恐らく、「脱力」信者にとって衝撃的なこと、残念なことは、この重力のベクトルが図1のFの向きである打鍵方向 (鍵盤下向き)に向いていることでしょうね。
体重50 kgの人の片腕全体の質量を約m = 3.25 kg (前の記事「身体を鍛えるな。感覚を鍛えろ。」を参照)とすると、まったく支えがなかった (上向きの力を一切加えない) 場合、打鍵方向にかかる力Fは以下のようになります。
「脱力」信者は、いとも簡単に重力までもゆがめてしまうのでしょうか。。。
くっ、こんなに頑張って考察したのに、我々凡人のピアノ人生は所詮ここまでなのか…
幸いにも我々凡人は、重力を自在に変化させることができない代わりに、重力のかかる方向とは反対の力をかけて、いとも簡単に腕を上げることができる構造になっています。 と、いうわけで、我々凡人は以下の式を使い、容易に打鍵方向の力Fを取り払いましょう。
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図2: 打鍵後の姿勢に各力の方向を入れた。 力の方向の色は、同じ色で示した筋肉によって生み出される力。 |
肩側の筋肉で腕全体を支えているのですが、ちょっと分解してみましょう。 手首から先の掌・指 (体重50 kgなら400 g)は、掌を上に持ち上げる筋肉 (短・長橈側手根伸筋)[図2: 緑色の線] )で手首から先を落とさないように支え、前腕 (体重50 kgなら1.15 kg) + 手首から先 (400 g)持ち上げる筋肉 (上腕二頭筋)[図2: 赤色の線]で、重力に引っ張られている力とほぼ同等の力 (打鍵方向とは逆向き)が出る分だけ収縮させれば支えられます。 (各数値は前の記事「身体を鍛えるな。感覚を鍛えろ。」を参照) 本来は、その手前の肩からひじまでの上腕 (体重50 kgなら1.75 kg) + 前腕 (1.15 kg) + 手首から先 (400 g)が、重力によって落とされないよう、肩側の筋肉 (三頭筋前部)で支えるのですが、今回は簡略化のため割愛します。
なお、ほぼ同等の力で、とお話ししましたが、鍵盤のキーを押し下げるのに必要な力は約0.48 - 0.488 N (『楽器の物理学』, 丸善出版(株), p.361参照)、つまり、たった約50 gを持ち上げる力と同等です。その力だけは打鍵方向へかけておくこと。 ただし、腕全体の質量が約3 kgということは、その50 g は腕全体の質量のうちの1.67 %なので、ほとんど考慮する必要はないでしょう。
これ、試してみてください。今まで、「脱力」すべき余分な力と勘違いしていた指や手首、前腕周りにかかっていた不快な負荷が完全になくなるはずです。 強い上腕の筋肉を使って弱い前腕を支える。これがシャンドール氏の言う、筋肉の「コーディネート」です。
どうでしょう?「脱力」という言葉よりも単純かつ明確で、比較的簡単に実践できる内容になっていると思いませんか? だって、今回、打鍵後で意識したのは、「脱力」という意味不明な言葉ではなく、筋肉の「コーディネート」のメインとして上腕の筋肉(上腕二頭筋)を、重力に引っ張られる力に対抗できる分だけ収縮させ、腕全体を支えるという正しい動作ですから。 (短・長橈側手根伸筋は、手首から先を落とさないように少し収縮させるだけ。) ぜひ、みなさんも「脱力」をピアノ練習の敵と考え、脱「脱力」してみませんか?
以下、ピアノの打鍵後に関するまとめです。 打鍵後、打鍵方向に力をいれる意味はない、というのは明白。 重力があるため、「脱力」すればするほど打鍵方向に力が入る。そのため…
今後は、「脱力」ではなく、この「コーディネート」という言葉を使って、ピアノ持論を展開していきたいと思います。
では。
脱力という抽象的な概念を具体的に説明したかのように思わせてこれは論点ずらしですね。
返信削除重力の計算をしてますが、ロジカルに見えてまったくそうではない。
なぜ、「脱力=支えがない」という解釈なのでしょうか?前提としておかしな話です。
重力を歪める云々の前に、支えのない脱力という物理的に有り得ない前提で話を進めてるのらおかしいですよね?(笑)
具体的な数字を出して論理的に説明してるかと思いきや、存在しない数字を例に話を進めていてびっくりしました。
身体のコーディネートが大事という点以外、賛同点はありません。
あなたのような論点ずらしの解説者がいなくなることを願います。
コメントありがとうございます。
削除> なぜ、「脱力=支えがない」という解釈なのでしょうか?前提としておかしな話です。
えっと…逆に、「脱力 = 支えがある」という解釈の方がおかしいと思いますが。。。腕の「支え」って「力を抜く」と得られるものなんですか?そいつはニュートンもビックリですね。
これは「脱力」の意味を調べていただければと思いますが…そうでなくても、例えば「日本初の脱力奏法を総合的に解説したガイドブック」と言われる書籍『ピアノ脱力奏法ガイドブック 1』をお読みいただければ、この前提がおかしくないことがわかるでしょう。
残念ながら、その書籍には「脱力」の演奏方法として "腕を放り投げる感覚。腕の付け根が外れる感覚。" などが書かれています。この文言を読んで、アナタ様のように「脱力 = 支えがある」と解釈する方が、かなり無理な話(というか矛盾している)だと思いますが。。。
書籍レビュー: http://lppianolife.blogspot.jp/2015/11/1-1.html
> 支えのない脱力という物理的に有り得ない前提で話を進めてるのらおかしいですよね?(笑)
このセリフ、「脱力は大事!」と言っている人たちに言ってあげてください。彼らこそが、支えのない脱力という物理的にありえない前提で話を進めている人たちですから。。。
(彼らは「脱力」の説明でよく、「腕をだらーんとさせなさい」と言っているでしょう?もし「だらーん」という表現が「支えのある脱力」だと感じたら、それはもう「脱力」病末期でしょう…)
> 存在しない数字
えっ、もしかしてアナタ様は今、地球にいないということですか?そっちの方がびっくりです。
それはさておき…残念ながら、それらの数字は存在していますが、実際にこうやって弾いている人はいない(もしいたら指を痛めている)、というのがここでの正しい解釈です。
ここで言いたいのは「巷でよく言われている「腕を脱力して弾く」というのを言葉通りに実行しようとすると、こうなります。でも、これっておかしいよね。実際は、「脱力」じゃなくて、ちゃんと腕を支えているんだよ。」ということです。
うーん、上記の記事のような書き方だとわかり難いのかな?
そもそも論ですが…ここでの「論点」は、「打鍵後に脱力する(= 力を抜く)のはおかしい」ということだけ。そしてまとめとして「打鍵後は、脱力という意味とは逆行して、腕を持ち上げる力(= 支える力)を使わないとダメですよ」と言っているわけです。これに論点のずれがありますでしょうか??腕の「支え」は力を「抜く」ではなく、【適切に】使わないと得られませんからね。
むしろ、この話の論点が見えなくなっているのは、「脱力 = 支えがある」というおかしな解釈をしているせいかと。。。
アナタ様のような「脱力」の意味を過大解釈している人たちがいなくなることを願います。
いつも記事を楽しく読ませてもらってます。
返信削除当方、どうしても解決できない悩みがあり、リトピさんのお力をお借りしたく思っています。
私は右利きなのですが、左手がいつもすぐに疲労を感じ、長時間演奏するのがきついです。
自分なりに色々分析してみたのですが、左手の疲労に対処しようとしても、結局弾いているうちに元の弾きグセが戻ってきて、どうしようもないのです。
わかったことは、
・左手が鍵盤を右手に比べて押さえすぎている
・左腕の動きが右手より小さい
・疲れるのはいつも手首から肘にかけてのあたり
というあたりです。できることはやったつもりなのですが、解決には導けませんでした。
こればっかりはどうしようもないのでしょうか、疲れに慣れる他ないのでしょうか?もし思い当たる解決策があれば教えていただきたいです。
記事の閲覧 & コメント投稿ありがとうございます。
削除おおぉ、十分ご自身の分析が出来ていますね!それぞれの項目について気になる点についてコメントいたします。
> ・左手が鍵盤を右手に比べて押さえすぎている
その原因は色々あるかもですが、もしかしたら「腕の重さを支える力が足りず、腕の重さが指先・鍵盤にかかり過ぎている」(つまり、必要な力が足りない)のかもしれません。
そのイメージは、例えば重たい米10 kgを持って歩いている時を想像してみてください。このとき、足に米の重さがかかるため、それに対抗するための力を使わなければならないので、疲労を感じ、長時間歩くのがきつくなりますよね?
恐らくそれと似たことが左手に起こっているかもしれません。重い米袋を持って歩いている時、足取りは重くなりますが、それは指が鍵盤を押さえすぎている状態に似ていませんか?なので、これを解消するには、指先にかかっている下向きの力(つまり腕の重さ)を取り除くため、上腕や肩で腕全体の重さを支え、指先への負担を軽くしてあげる必要があると思います。
> ・左腕の動きが右手より小さい
これも、重たい米10 kgを持って歩いている時動きが制限されているように感じるのと同様なことが左手に起こっていると思われます。恐らく、腕の重さを上腕(肩から肘にかけての腕)や肩の力で適切に支えてあげれば(つまり、指先にかかる腕の重みを減らせば)、より動かしやすくなると思います。
> ・疲れるのはいつも手首から肘にかけてのあたり
その部位(前腕と呼ばれる部位)は指を曲げ伸ばしする筋肉が入っているので、恐らく指(の筋肉)をたくさん使っているのが原因だと思います。ただし、ある部位が疲れる(もしくは痛くなる)のは、その部位(の筋肉)をたくさん使っているから……なのですが、だからといって「力を使いすぎているのが悪いから、どうにかしてその部位の力を抜かなきゃ!」と考えるのは早計です。
実際に重たい米10 kgを持って歩くとわかると思いますが、その米の重さが足にかかるので、その重さに対抗するための力を足に使わないと、まともに歩くことはできませんよね?このとき、足が疲れる理由は「足に無駄な力を使っているから」ですか?違いますよね??本当の理由は【重たい米10 kgを持って歩いているから】ですよね???
なので、何度も述べていますが、腕の重さを上腕や肩の力で適切に支えてあげれば(つまり、指先にかかる腕の重みを減らせば)、指先の負担が減るので、指(の筋肉)をたくさん使う必要がなくなり、疲れ度合いが減るのではと思います。
ちなみに、非利き手の左手の動きを強化したい場合は、【対照的練習法】を取り入れることを強くお勧めします。
右手と左手の動きを全く同じ動きで(つまり鏡のようにして)弾く練習方法で、利き手の右手の動きを非利き手の左手にトレースしやすくなります。
簡単な解説とイメージは以下のサイトをご参考ください。
https://pia77.blogspot.com/2016/07/blog-post_27.html
実際の演奏風景はこちらのサイトの動画をご参考ください。
https://blog.goo.ne.jp/pecorin1117/e/99970b13dc6952b541603783b94cccde
また何か気になることがございましたら、お気軽にコメントください。
コメントありがとうございます。肩や上腕の力を利用する、というのは、具体的にどこをどう意識すれば可能になるのでしょうか?そこがよくわからず困ってます。
削除肩や上腕の力を利用するというのは、例えば和音打鍵のとき、打鍵時に腕を鍵盤方向に伸ばすような動きを取り入れると、それらを使う感覚がわかりやすいかもです。
削除力を入れるとかえって疲れるのでは?と思うかもですが、腕全体を打鍵方向に押し出すように打鍵すると、疲れにくくて力の強い部位を使いつつ、腕全体の質量(× 重さ)を使った打鍵が出来るので、かえって楽に感じるはずです。