理系ピアノ奏者におすすめの書籍13: ピアノがうまくなるからだ作りワークブック

公開日: 2019年9月15日日曜日 アレクサンダー・テクニーク ピアノ 持論 書籍 脱力

こんにちは、リトピです。

こちらは、理系である私がおすすめする書籍をご紹介するコーナーです。 今回ご紹介する13冊目はこちら。

この書籍は、以下の人たちにオススメです!

  • 演奏中に入ってしまう身体の力みが、全然取り除けない
  • 「脱力」を強く意識しているのに、一向に身体が楽にならない
  • 演奏する身体について興味を持ってるんだけど、何から読めばいいの?

実際のところ、これらは本書以外に、書籍『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』『ピアニストのためのアレクサンダー・テクニーク』『ピアノと友だちになる50の方法 からだの使い方』も非常にオススメ。それぞれ手に取ってみて、読みやすそうだと感じたものを選ぶと良いでしょう。

この書籍の著者であるかわかみひろひこ先生は、アレクサンダー・テクニークの教師。アレクサンダー・テクニークとは、ボディワークの一つで、簡単に(語弊を恐れず)言えば、身体のことを知り尽くした人たちによる【身体の動かし方のコツを見つける方法】を提示してくれるもの、とお考え下さい。

そんな、身体のことを知り尽くしたプロである、かわかみひろひこ先生によるピアノ奏法の指導ってどんなものか興味ありませんか?早速、その一部を見てみましょう。

この書籍を読んで、特に目から鱗だったものはこちら。

アレクサンダー・テクニークを通してピアノ奏法を考えることの良さを学べる
本書は、アレクサンダー・テクニークのエッセンスがふんだんに詰め込まれていますが、それを知らなくても十分理解 & 実感できるような作りになっています。本書の核となるキーワードは【ボディマップ】(脳科学的には身体近接空間(ペリ=パーソナル・スペース)と呼ばれる)。

実は、みなさんの頭の中には、この【ボディマップ】(いわゆる、自分自身の身体の骨格や筋肉などの配置の地図)を持っています。そしてこれが悪いと、筋肉が固まり、動きが悪くなるんです。ってことはですよ、そのみなさんの頭の中にある【ボディマップ】が悪いままなら、いくら「脱力」を意識しても、身体の動きは楽になんてならないんです。その解決方法はただ一つ、みなさんの頭の中にある【ボディマップ】を(良いものに)塗り替えること。その方法を、本書では提示しています。

「脱力」の問題点を的確かつ論理的に指摘している
例えば、以下の部分。
脱力しようとして、肩や脇の下の二の腕の付け根の周辺を押し付けている人はかなり多くいます。(中略)周辺を押し下げると、大胸筋が硬くなる(緊張する)こと(中略)広背筋が硬くなる(緊張する)ことがわかります。つまり、肩や脇の下、二の腕の付け根の周辺を押し下げると、リラックスするどころか、胸側から腕に向かう筋肉と背中側から腕に向かう筋肉が同時に緊張します。このような状態では、うまく演奏できるはずありません。(p. 24-25)

また、コラムにある手首をブラブラさせる【手首を痛めないための「脱力体操」は効果的?】(p.118)は、「脱力」に悩まされている人、必読です。著者曰く "そのような「脱力体操」は、演奏にはまったく生かせません" とバッサリ。これ、私も同意見です(詳細は、記事「お悩み相談室16: 手首が下がるのですが…」を参照)。

「脱力」に替わる言葉で、図解しながらわかりやすく説明している
本書では、身体の力みを取る方法を説明する際、「脱力」ではなく以下のような言葉を使って説明しています。
  • 筋肉のこわばりを解放する
  • 自在な動きを取り戻す
  • 支えを作る
  • 自由なからだを手に入れる
要は、「何でもかんでも力を抜けばいいってもんじゃない」ってのを、本書は図・写真付きで教えてくれます。図・写真付きなのは純粋に嬉しい。

指の「独立」、指を「鍛えろ」という表現は要注意
本書では、暗にそれらに対して注意を払うようにと言っています。例えば…
  • 指の「独立」が良くない理由
    著者曰く、拮抗筋肉が過剰に収縮・緊張してしまい指のコントロールが思うようにいかない理由は、 "弾く指だけに注意が向いている" から。それを防ぐには、著者曰く "弾く指だけでなく弾いていない指にも注意を向ける必要があります。" とのこと。
  • 指を「鍛えろ」が良くない理由
    例えば小指。小指は「鍛える」から楽に動かせるようになるのではなく、 "小指にかかわる関節や筋肉の構造を知ること" で、より楽に動かせるようになるんです。
だって、上で言ったように、みなさんの頭の中にある【ボディマップ】が悪いままだったら、いくら弾く指だけを意識しようが力を抜こうが鍛えようが、その部位の動きは楽にならないんですから。

ピアノを弾くときの意識に対する提案が斬新
著者は、ピアノを弾くとき「指」で「鍵盤の底(正確には、ハンマーが飛び出される打鍵位置)」を狙うことを意識、ではなく……
「指から拡張したボディマップに含まれるハンマーヘッド」で、「指から拡張したボディマップに含まれるスチール製の弦」を狙うのです。(p.16)

……と、言っています。これ、アレクサンダー・テクニークを知らないと、「は?」と思ってしまう内容ですが、この考え方は本当にスゴイ。この良さは、実際にこれを意識して打鍵してみた人にしかわからないと思う。

しかもこれ、面白いことにピアノ以外にも使えます。普段道具(ペンでも包丁とか、はたまたPCのキーボードとかでもいい)を使う人で、「なかなか上手く使えないなぁ」とか「長時間使っていると身体が痛くなるなぁ」と感じている人は、この【拡張したボディマップ】をその道具~道具の先までを意識すると、あら不思議、それらの悩みが一挙解決しちゃうでしょう。(ただ、これをちゃんと意識できるようにするには、やっぱりアレクサンダー・テクニークのボディマップを深くまで理解していることが必要なので、結構難しいかも)

本書を読んだとき、「やっと、ようやくこんな書籍が出てくれたか!」という気持ちでした。ここ立て続けに、アレクサンダー・テクニークを利用したピアノ奏法の紹介本(『ピアニストのためのアレクサンダー・テクニーク』『ピアノと友だちになる50の方法 からだの使い方』等)が出版されてきていますが、こういった書籍が世の中に出版されてきているのは本当に嬉しい。

やっぱり、ピアノなどの楽器演奏に関わる「身体のこと」(解剖学、生理学、運動学の総合分野)は、身体のことを知り尽くしたプロに任せた方が安心ですね。巷でよくあるようなアドバイス(「脱力」など)は、いわば素人の戯言(実際問題、私も似たようなものかもしれない……)。そういった素人らによる「単なる思い込みによる自説」に惑わされないよう、我々は気を付けなければいけませんね。

まだまだこの書籍から学んだことはたくさんあるので、ご紹介していきたいのですが、今回はこの辺で。

では。

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