コラム4: あんなところやこんなところに「インピーダンスマッチング」

公開日: 2015年12月3日木曜日 持論

こんにちは、リトピです。

ピアノの新奏法として考案した「インピーダンスマッチング」奏法ですが、「あまりにも複雑すぎて理解しがたい」という方に、記事「コラム1: スポーツ界における「脱力」とは」で車・野球・水泳を例に挙げましたが、もう少しわかりやすくしてみした。

インピーダンスマッチングを取り入れている例

実は、我々は、意識的か無意識的かにかかわらず、インピーダンスマッチングをとるために、いろいろ工夫しています。ピアノでは図1のようになるはずなのですが、まだまだ考察中です。(運動インピーダンスは人間の運動時のインピーダンス、機械インピーダンスは物が動かされるときのインピーダンス)

図1. ピアノ打鍵時の(a)イメージと(b)回路図へ変換
…というわけで、もっと身近なところで、実際にインピーダンスマッチングが使われている例をいくつかお見せします。

水の中を歩く場合

プールなどで、水の中を歩くとき、思いっきり力をかけまくっても全然うまく歩けないですが、試行錯誤を繰り返し、それなりにすいすい歩ける力の入れ方が見つかる、という経験をしたことはないでしょうか。実はコレ、身体の運動インピーダンスと水の(機械)インピーダンスを合わせようとしているんです。(図2)

図2. 水の中を歩いた時の(a)イメージと(b)回路図へ変換

ただ、人間と水では各要素の値がかけ離れているため、完璧に両者のインピーダンスを合わせることができません。(グラフはインピーダンスの虚数部のマッチングがずれると上に移動します。)実際は図3のグラフにおける極小点を見つけることとなります。(複雑になるとややこしいので、運動インピーダンスは実数部(粘性)のみを変化させています。)

図3. 水の中を歩いた時の人間と水のインピーダンスの関係(イメージ)
この極小点が「それなりにすいすい歩ける力の入れ方」のポイントです。水の中を歩くとき、我々は苦労しながらこの点を探して「それなりにすいすい歩ける」ようにしています。

野球、テニスやゴルフでボールを打つ場合

上記では、人間と水のインピーダンスの関係でしたが、今回は、人間とボールの関係です。何も持たずに、野球、テニスやゴルフのボールを手で打って遠くに飛ばすことができるでしょうか?これができないのもインピーダンスマッチングが取れていないからなんです。

そもそも、水の中で歩いていたときも、人間と水とでは完全なインピーダンスマッチングが取れませんでした(人間が水のインピーダンスの(実数部だけでなく)虚数部にも合わせられないため、と推測)。手でボールを打つ際もそうです。そこで登場するのがバッド・ラケット・クラブといったツール。少なくとも、ラケットやクラブはインピーダンスマッチングの理論を設計手法として導入しているようですね。
(参考ページ: インピーダンス・マッチング

イメージにすると以下の図4ようになります。(本当は、バッド・ラケット・クラブを振るときに、人間とバッド・ラケット・クラブの間でインピーダンスマッチングできるか、という議論もあるのですが、今回は、人間とバッド・ラケット・クラブが一体化しており、ボールを打つ瞬間にのみフォーカスします。)

図4. バッドなどを使ってボールを打つ時の(a)イメージと(b)回路図へ変換
こうすることで、ボールとのインピーダンスを合わせやすくなるので、理想としては、以下の図5のように変化されるでしょう。
図5. バッドなどを使ってボールを打つ時の【人間+バッド】とボールのインピーダンスの関係(イメージ)
実は、バッドやラケット・クラブはインピーダンス整合器として役立っていたんですね。

まとめ

だいぶアバウトな説明になってしまいましたが…このように、インピーダンスマッチングは、身近ないたるところで(意識しているか無意識かは別として)たくさん利用されています。この考え方をピアノの打鍵に応用しよう、というのがこの「インピーダンスマッチング」奏法です。

以下は、参考として、電気、機械、運動のインピーダンスについてご紹介しておきます。興味のある方はどうぞ

参考: 各分野でのインピーダンスの紹介

ここで、各分野についてのインピーダンスの紹介をしておきます。全て直列つなぎとしています。

電気系

インピーダンスマッチングの考えは電気回路から来ていますので、基本から簡単にご紹介します。回路図はコチラ(図6)。

図6. RLC直列回路
このときの電圧・電流の関係式は以下のようになります。

微分を"jω"、積分を"1/jω"とすれば(jは虚数を表す)、

そして、電気系のインピーダンスは次のようになります。

これらを、機械、人間に応用します。

機械系

今度は機械系です。上記回路図を基に、機械に応用してみます。するとこんな感じ(図7)になります。

図7. 機械インピーダンスを示した図
各部の色は、電気系の回路と対応しています。 このときの力・速度の関係式は以下のようになります。
  1. Rm: 機械抵抗(粘性)
  2. Mm: 質量(慣性)
  3. Cm: 機械コンプライアンス(剛性の逆数)
ここで、機械抵抗は粘性(ドロドロしたもの)を、機械コンプライアンスは剛性(ばねのような働きをするもの)の逆数を表しています。引きずりながら物を動かすとき、一定の負荷を感じる原因が機械抵抗(粘性)、重いものがすぐ動かせない原因が質量(慣性)、振動を抑えるために自動車に付いているサスペンションの機能が機械コンプライアンス(剛性の逆数)と捉えていただければと思います。

このとき、機械インピーダンスは次のようになります。

この機械インピーダンスは、物の動かしにくさの指標、と考えてください。(ただし、小さければいい、という話ではありません。)

運動系

図は割愛。。。というかイメージは機械系と変わりません。動くものが筋肉・骨格になっているだけです。 力・速度の関係式は以下のようになります。

  1. Bh: 粘性(筋活動レベルによって変化)
  2. Mh: 慣性(動作の仕方によって変化)
  3. Kh: 剛性(筋活動レベルによって変化)
このとき、運動インピーダンスは次のようになります。

参考スライド: 手先外力印加時の上肢機械的インピーダンス 機械的インピーダンス特性に関する研究

運動系と機械系のインピーダンスマッチング

上記の式より、運動系と機械系のインピーダンスマッチングさせる条件は、以下の式の通りです。

実数部:
虚数部:
こうすることで、人間の動きが機械(水やボールの動きも含めた)にスムーズに(反射なく)伝えられるので、人間側は、その動作を楽に感じます。

では。

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