理系ピアノ奏者におすすめの書籍8: ミスタッチを恐れるな

公開日: 2015年12月5日土曜日 ピアノ 書籍

こんにちは、リトピです。

こちらは、理系である私がおすすめする書籍をご紹介するコーナーです。 今回ご紹介する8冊目はこちら。

この書籍、私が今まで出会った書籍の中で、最高峰ものです!音楽を愛するものすべての人に読んでもらいたいです。そして、特に音楽関連の指導者や、出来ることなら音楽関連の医療に携わっている人に読んでもらいたい(最終章に、音楽疾患を持つ人に対して医師はどう対応すべきか、が書かれています。これは、斬新かつ最高のアイディアだと思います。)と、切に願っております。

ただ、先に述べておきます。この書籍『ミスタッチを恐れるな』は、「別にミスタッチなんて気にすんなっ♪^^」というようなミスを容認するようなあまっちょろい内容ではなく、「ミスタッチから学べることはたくさんある。ミスこそ大事に扱い、自らの力で学びなさい!」という大変手厳しい内容となっております。でもそれがいい!

しかし、この書籍、文中には全く触れられていませんが、なぜか「アレクサンダー・テクニーク」に通じるものを感じます。例えばこれらの部分。

いつも自分をコントロールできるはずだという無駄な考えを捨て、その代わりに絶え間なく変化する「現実」の本質を受け入れるようにすれば…(p. 72)
背骨を伸ばし、頭をいろいろな方向に傾けて重要な首、あご、肩周辺の緊張を解く。(p. 123)
陽気な好奇心を持ち続けることが大切だ。(p. 127)
この、「コントロールしたいという考えはやめなさい」という言葉、この書籍で特にたくさん出てきます。これはまさに「アレクサンダー・テクニーク」でいう「抑制」(【ノン・ドゥーイング】)、そして【ミーンズ・ウェアバイ】に近い内容です。その次は、ちょっと表現は異なりますが、「プライマリー・コントロール」に近い内容です(でも背骨は自然なカーブを保たせること)。最後に、一番下の内容はまさに【上向き思考】の「方向性」を物語っています。そのため、私の中では、(この著者が「アレクサンダー・テクニーク」を知っているかどうかはわかりませんが)この書籍を「音楽家のためのアレクサンダー・テクニーク活用編」と断言したい。(入門編: 『音楽家のためのアレクサンダー・テクニーク入門』

とにかく…そのため、この書籍も「アレクサンダー・テクニーク」を知らないと、理解に苦しむ可能性があります。私のオススメはまず『音楽家のためのアレクサンダー・テクニーク入門』を読むことです。これが理解できると、この書籍で書かれていることが、鳥肌が立つほど納得できると断言します。

この書籍を読んで、特に目から鱗だったものはこちら。(なるべく内部の核心に触れない程度にまとめます。書籍の内容については、ぜひ手に取って、自分の目で読んでください!この書籍の言葉を借りるなら「コツをつかめるのは自分だけ」ですから)

練習の初期段階から「ミスタッチするな!」はおかしい
この書籍では、今まで続いているこのような練習・レッスンの危険さに警笛を鳴らしています。著者自身が見聞きした教師と生徒のやりとりが描かれており、「ミスタッチをするな!」という極度のプレッシャー、厳しすぎる指導によって、「ミスタッチ」しただけで罪悪感すら感じ、おどおどとした生徒の演奏はまるで覇気がなくなり…最終的にピアノを弾くことが嫌いになってしまうという状況がどれだけあることか。。。読んでるだけで本当に心が痛くなってきます。。。でも、それを皮肉って「アンレッスン」なんていう画期的な指導法も載っているのが、この書籍の面白いところ。

「ミスタッチをしないように」と意識するあまり、生き生きした演奏が消える
人は「【ミス】をしないように」と意識すると、思い切った動作ができなくなってしまいます。それではダイナミックな演奏ができず、身体も音も縮こまってしまいます。あの、子供の頃の音楽に対する感受性(楽しい曲ではピョンピョン飛び回るなど )が跡形もなくなくなってしまうのはこのせいでしょうね。。。さらに、【ミス】を減らそうと、身体をコントロールしたいという欲求が出てきます。これは「アレクサンダー・テクニーク」的には最悪な状況。「ミスタッチをしないように」と意識しながらの演奏は、つまらないどころか、無意識のうちにさらなる【ミス】を誘発しかねない状態なんです。

今までの自分の成長は【ミス】のおかげ
アナタが自転車に乗れるようになったのも、そもそも幼少期に歩くことを覚えたのも、たくさん、転ぶという【ミス】してきたのではないでしょうか?むしろ、そういう【ミス】をしたおかげで、自転車に乗れたり、歩けるようになったのではないでしょうか?また、ピアノでいう「一度もミスタッチをせずに練習しなさい!」というのは、自転車でいう「一度も転ばずに乗れるようにしなさい!」と同じなのでは?それで自転車が今のようにこげるようになると思いますか?さらに、質問します。今、アナタが自転車乗っているときに、練習当時の自転車の【ミス】は足を引っ張っていますか?ではこの状況を、ピアノにも当てはめてみてください。

「ミスタッチ」から学べることはたくさんある
この書籍の最大にして最高の内容。なのでここでは詳しく取り上げませんが、書籍の言葉を一つ載せておきます。
手はミスタッチでなにを伝えようとしているのだろうか?(p. 154)

この問題解決方法は大人だからこそ取り入れられる手法
よく「楽器演奏を大人から始めると大変」という言葉を聞きますが、大人だからできる練習法があります。それは、普段からよく考えている問題解決の方法です。取り扱う問題を簡単にするために分割したり、そもそもそんな問題がない方法を考えてみたり、問題になっているものの間(ネガティブスペース(対象物の間にある空間))を見てみてたり、大人だから考えられる手法はたくさんあるはずです。物事の吸収が早い子供と比べると、演奏テクニックは劣るかもしれませんが(そもそも比べる必要はないと思いますが)、こういう問題解決能力は大人の方が断然あるはずです。それを利用しないのは大人としてもったいない。それらを利用することで、確実に大きな成長・ブレークスルーが得られます。

まだまだこの書籍から学んだことはたくさんあるので、ご紹介していきたいのですが、今回はこの辺で。

変かもしれませんが、この書籍を読んで、ミスタッチをするのが楽しくなりました。正確には、ピアノを弾く前に、「今日は、自分はどんなミスタッチをするのかな。」「今日のミスタッチは私にどんなことを教えてくれるのかな。」という具合です。この練習、機械的にメトロノームを使って、最初はゆっくり、少しずつ速く…という練習より本当に全然楽しい。そして、確実に練習の質が上がっていて、今までよりも早くピアノのテクニックが向上しているように感じます。

最後にもう一度。この書籍は、音楽を愛するものすべての人に読んでもらいたいです。

では。

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