お悩み相談室9: 黒鍵のミスタッチが多いのですが…

公開日: 2015年12月8日火曜日 ピアノ 持論

こんにちは、リトピです。

さて、今回の「お悩み相談室」の内容はこちら。

悩み9: 黒鍵のミスタッチが多い

黒鍵って白鍵に比べて高いところにあって、角ばっているので、打鍵に失敗したり、滑り落ちたりしちゃうんですよね。。。 しかし、あの鍵盤配置は、人間の手に合った配置になっているようです。なので、実はスケールはハ長調が一番弾きにくい音型なんだとか(参考: スウォナーレピアノ教室)。でも、曲によっては黒鍵が弾きにくく感じますよね。。。

それって単なる練習不足?「じゃ、やっぱりメトロノーム使ってゆっくり弾くことから練習しないと…」

ちょーーーーーーっと待った!いつまでもそんな練習方法じゃ、その場しのぎ(そのフレーズ専用の手の動きしか学べない)になってしまうと思いませんか?それは非常に(練習時間が)もったいない。

今後弾く曲に必ずある黒鍵すべてに対応できるよう、今練習している曲で、それらすべての曲の黒鍵を弾けるように練習するのがアナタにとって一番ではないでしょうか?(だいぶ大げさかもしれませんが、練習ではその場しのぎの組み合わせではないく、全体的な応用力を身に付ける方が大事では?という問題提議をさせていただいております。)

今回は、書籍『ミスタッチを恐れるな』で得られた知識を基に、普段とは違う視点から、なぜ黒鍵のミスタッチが多くなってしまうのか、を考えてみます。

目の錯覚がミスタッチの原因の一つ!?

ところで皆さん、トリック・アートには行ったことがあるでしょうか?人間の目が錯覚を起こすおかげで、絵が立体に見えたり、浮いているように見えたり、大きいものが小さく見えたりと、不思議で楽しい体験ができる場ですよね。私、とっても好きなんです!

…それはさておき(笑)、この目の錯覚、実は結構厄介で、スケールやアルペジオでミスタッチする原因として考えられるものの一つに代表されるようです(詳細: 書籍『ミスタッチを恐れるな』)。例えば3度ずつで上昇 or 下降するフレーズでは、理論的(音符的)にはどの音の間もすべて同じ幅(距離)ですよね?

しかし目で見た場合はどうでしょう?ピアノの前の椅子に座ったまま、中央の鍵盤と左右の鍵盤を見比べてください。遠近法の要領で、中央の鍵盤に比べて、左右の鍵盤の幅が狭くなっているように【見える】と思います。「…うん、当たり前だね…」とお思いでしょうが、この幅が狭く【見える】という感覚が今回のキーポイント。

では、ちょっと遠くにある物に手を伸ばして、それを取ってみましょう。このとき、物と自分の【実際の】距離なんていちいち測ってられないでしょうから、恐らく、物の【見える】位置めがけて「えいやっ!」と腕を伸ばしたはずです。しかも、それだけのはずなのにキチンと物を持ってこれる。これはつまり、ピアノの場合でも、鍵盤が【見える】位置めがけて指を「えいやっ!」と置くだけで十分なんです。たとえ鍵盤の幅が狭く見えてても。

逆にどの音の間もすべて同じ幅(距離)と考えてピアノを弾こうとすると、見た目の幅をも同じにしようとして、アルペジオの上昇or下降の際、大きく指の間を広げて弾こうとしてしまっている可能性があります。これがスケールやアルペジオでミスタッチする原因だそうです。そのため、見た目に沿った練習をするのが良いみたいです。面白い見解ですよね。

というわけで、この「目の錯覚によるミスタッチ」という考えを黒鍵に当てはめるとどうなるのか、考えてみましょう。

小さいもの、黒いものは重く感じる

ちなみに、視覚と運動には上記以外にハッキリとした関連性があって…ある2つの同じ重さの物を別々に持ち上げるとき、サイズの大きなものは軽く、サイズの小さいものは重く感じるようです(図1参照。シャルパンティエ効果と呼ばれる)。どうやら、イメージ(小さいものは軽いはず!)と実際の重さに差があると、その差分だけ軽い・重いと感じるそうです(参考: 書籍『タッチ』, 医学書院)。非常に面白い結果ですね。

図1. 同じ重さでも、大きさの違いで重さの感覚が変わる

さらに、色による重さの違い、というのもあります。白色と黒色の箱が、たとえ同じ重さであったとしても、持ち上げたとき、黒色の箱の方が重たく感じるようです(図2)。なんと、白い箱が187 gのとき、100 gの黒い箱と同じ重さに感じたようです。つまり、色が違うだけで倍くらい重さの感覚が異なるってことか?!そのため、引越し屋さんで使用する段ボールは白色のものが増えてきているそうです(参考: HITACHI 「引越屋さんのダンボールに見る色の重さの秘密」)。

図2. 同じ重さでも、色の違いで重さの感覚が変わる

これをピアノの鍵盤に応用させると…黒鍵は白鍵に比べて細く(小さく)、色も名前の通り真っ黒です。つまり…白鍵と黒鍵が同じ重さだったとしても(恐らく、音の高さが近ければほぼ同じはず)、目の錯覚により、黒鍵の方が断然重く感じるはずです。そりゃ、黒鍵が弾きにくいと感じるわけだ。

つまり、理論上は白鍵と黒鍵の重さが同じだったとしても、見た目に沿った練習をするため、「黒鍵の方が白鍵よりも重いんだ!」と思ってピアノを弾かないと、黒鍵が弾きにくく感じる、というワケですね。

白地に黒の図形はより小さく見える

ご存知のように、白は膨張色で実際より大きく見え、黒は収縮色で実際より小さく見えます。洋服選びでは気を付けたい事項ですよね!(実は、そのせい(?)で、碁石は白を実際に若干小さく作って、白・黒の碁石の両方が同じ大きさに見えるようにしているようです。(wiki調べ)

さらに、その2色の配置によっては、「光滲現象」というものがおきます。「光滲現象」とは…

一般に、暗い背景に明るい領域があると大きく見え、逆のときは小さく見える。
参考: 錯視とトリックアート入門
この目の錯覚は、パルテノン神殿が例としてよく取り上げられていて、外から神殿を見ると、「神殿の柱(白)」と「神殿内の影(黒)」のコントラストで、柱が太く見え、神殿の中から外を見ると、「神殿の外の明るさ(白)」と「柱の影(黒)」で柱が細く見える、とのこと。

またもや、これをピアノの鍵盤に応用してみましょう。早速、図3を見てください。

図3. 鍵盤の(a)現在の色と(b)反転させた色
どうでしょう、幾分か図1の下の(b)の方が黒鍵(の位置にある白い鍵盤)が太く見え、逆に図1の上の(a)の方の黒鍵は細く見えませんか?(むしろ、鍵盤の間の線の太さが変わって見える!?)これが光滲現象と呼ばれるもので、恐らくピアノを弾いているときでも起こっている目の錯覚なのではないでしょうか

黒鍵を手で触って実際の大きさを確かめたとしても、その理論的な大きさは、ピアノ練習ではまったく役に立たないどころか、黒鍵を弾きにくくする要因になっているかもしれません。そのため、「黒鍵は思っている以上に細いんだ!」という意識をもってピアノを弾かないと、黒鍵から指が滑ってしまう可能性があるかも。。。

まとめ

今回の話をまとめると、以下のようになります。

  • 目の錯覚により、事実と異なる現象が見えてくる
  • 大事にすべきは、事実ではなく、目で見えたもの
  • ピアノの黒鍵は白鍵より重たく見えるので、打鍵しにくく感じる
  • ピアノの黒鍵は思ったより細く見えるので、滑り落ちてしまう
この対処法としては…恐らくこの4点が理解できただけでも十分なはず。なぜなら…今まで黒鍵を白鍵と同じように弾こうとしていたから、黒鍵でよくミスしていたのではないでしょうか。どう身体をコントロールさせるか、ではなく、このような(上向きの)意識が大事。意識が変われば行動が変わります。自分を信じてこれらも練習を続けていきましょう!

今回のお悩みである「黒鍵のミスタッチが多い」に対して、書籍『ミスタッチを恐れるな』で得られた、目の錯覚による「ミスタッチ」の応用で、ちょっと一風変わった視点で回答してみました。いつもの練習ではなかなか黒鍵の演奏がうまくいかなかったときには、文字通り「騙された!」と思って、これらを試してみてもいいのではないでしょうか?違う視点で練習すると、新たな発見があるかもしれません。

では

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