プレ「脱力」4: いろんな弾き方を試そう

公開日: 2017年10月3日火曜日 ピアノ 持論 脱力

こんにちは、リトピです。

皆さんは、買い物をするとき、特に高額商品を買うとき、どんなことをしていますか?「これを買えば絶対に正解!」みたいな指標がない中、どのように商品を購入しているのでしょう。何も考えずに、目の前のものをサッと購入…なんてしないですよね。

実際は、同等の商品を見比べたり、購入前に実際に使ってみたりしているのではないでしょうか。そうやっていくつかの物を【試して】みたり、【比較】してみたりすることで、最終的に「より満足するもの」を手に入れているのではないでしょうか。今日はそんなお話(ぇ

どっちが楽?

導入編

さて、ピアノとは関係ない話からスタートした本記事ですが…ここで言いたいのは、「正解がわからないものは【試して】みたり【比較】してみたりすることが大事」ということ。ピアノの練習においても、この考え方は非常に大事です。

ただ…どうやらピアノ界では「ピアノ演奏は「脱力」して弾くことが絶対に正解!」という風潮があるようです。。。どうも、一部の「脱力」信者は、何でもかんでも「脱力」という言葉を頼り過ぎているような気がします。

さらに、彼らは「力を抜くことで、動作が楽になる」と思っているようです。。。実際は「適切な方法をとることで、(今までよりも)力をかけずに済む = その動作が楽になる」が正しい解釈なのに…

…というわけで、当記事では、一部の「脱力」信者の言う「力を抜くことで、動作が楽になる」という考えがなぜダメなのかを説明しつつ、動作が楽になるための適切な方法(より良いピアノの弾き方・楽にピアノを弾く方法)の探し方の指針をご紹介します。

例: スパナの使い方

早速ここで問題。以下、図1のスパナ(図では、モンキー・レンチが使われているのはご愛敬)、点Aと点Bのどちらを持つ方が、より楽にねじを外せるでしょうか。

図1. スパナを持つ位置。A.手前、B.奥

「脱力」を考える場合

仮に、点Aを持ってスパナを動かそうとすると…図2のような状況になります。かなり力を入れないとねじが外れませんよね。。。

図2. 点Aでスパナを持ってねじを外そうとした場合

ここで、一部の「脱力」信者の言う「力を抜くことで、動作が楽になる」という考えに従って、力を抜いてみましょう(FA >> F'A)。するとどうでしょう…あら不思議(?)、図3のようにねじを回すための力が足りず、ねじは全く動きません。

図3. 点Aでスパナを持ったまま、力を抜いた場合

これをグラフにすると、図4のようになります。点Aを持ったままスパナを回してねじを外そうとするためには、FAだけの力がないと、ねじが回らないため、その場でいくら「脱力」しても、ねじが回らないだけで、「スパナを動かす」という動作は絶対に楽になりませんね。

図4. 点Aでスパナを持ったままの状態での力の遷移

持つ位置を変える場合

一方、点Bを持って図5のようにスパナを動かしてみましょう。するとどうでしょう…思ったよりも(点Aでスパナを動かそうとしたよりも)楽にねじが外れるではありませんか。

図5. 点Bでスパナを持ってねじを外そうとした場合

これをグラフにすると、図6のようになります。実際に「スパナを持つ位置を点Aから点Bにずらしてみる」、ということを【試して】みると、点Aでスパナを動かそうとするときと【比較】して、より楽にねじを外せるのがわかったと思います。これが、「適切な方法をとることで、(今までよりも)力をかけずに済む = その動作が楽になる」ということ。

図6. 点Aと点Bでスパナを持ってねじを外そうとしたときの力の遷移

スパナの使い方: まとめ

一旦まとめます。点Aから点Bへ持つ位置を変えると、ねじを外すために必要な力が小さくなりますが、それが「脱力」できた、という意味合いにはなりません。点Aで持つ力を抜いても、自動的に持つ位置が点Bに移動するわけありませんから。つまり、 自分で正しい使い方を模索するしか方法はない、ということ。

最初の質問で、すぐに「点Bの方が楽にねじを外せるでしょ!」と答えた人は、すでに、点Aと点Bを持ってねじを外すという両方を【試して】おり、その両者を【比較】した結果、「点Bの方が楽にねじを外せる!」という判断をしているのではないでしょうか。こういうのは、いくらアレコレ考えてもダメで、実際に【試して】みたり、【比較】してみたりしないとわからないものです。いわゆる、「百聞は一見に如かず」…みたいな?

また、面白いことに、一度「点Bを持ってスパナを動かす」ということの「楽な状態」を知ると…ねじを外すときはもう「点Aを持ってスパナを動かす」ということは絶対にやらなくなります。

実は、この考え方は、ピアノも同じです。

ピアノの場合

「脱力」信者の考え方

「今の弾き方」で手首や腕、肩に力が入っている場合、「今の弾き方」には一切注目せず、どうやったら力を抜けるか…ということばかりに躍起になっています(「まずは、手をぶらぶらさせて~」など)。

これは、上記のスパナのお話の「点Aで持ってねじを外す」というやり方を変えずに、力を抜こうとする考えと同じではないでしょうか。そんなのが上手くいくわけない・「より楽になる」わけがない、というのは上記で説明済。

ここで、最初から「点Bで持ってねじを外す」という【正しいやり方】をしているという可能性も否定できないですが…初心者が、最初から【正しいやり方】で弾けている確率ってどれくらいでしょう?それに、仮に最初から【正しいやり方】で弾けていれば、そもそも「力が抜けない!」ということに悩んでいないです。

さらに…たとえ「脱力」で上手くいった(ように感じた)としても、次の日にはその感覚を忘れている、なんてことありませんか?それは、「脱力」 = 「楽な状態」ではないから。そうやってどれだけ時間を費やしても、何も身に付いていなければ、残念ながらその時間内にやったことは練習とは呼べません。どんなに努力しようが、結果が何もなければ、その努力に意味はないです。

図7. ピアノも、その場で「脱力」しても「より楽に弾ける」わけがない

弾き方を変えてみる

上記スパナの使い方の例で「正解がわからないものは【試して】みたり【比較】してみたりすることが大事」ということを学びました。「脱力」がピアノ演奏において正解ではない以上、いろんな弾き方を【試して】みたり【比較】してみたりする必要があります。

そして、面白いことに、いろんな弾き方を【試して】みたり【比較】してみたりした中で、「より楽な状態」が見つかると…ピアノを弾くときはもう「以前のツラい弾き方」は絶対にやらなくなります。つまり、練習によって、より良い弾き方が身に付く、ということ。これこそが【正しい練習】のありかたです。

図8. ピアノも、「正解がわからないものは【試して】みたり【比較】してみたりすることが大事」という考え方で練習することで、「より楽な状態」が見つかり、上達していく

まとめ

かの有名なアインシュタインはこう言いました*

「同じことを繰り返しながら違う結果を望むこと、それを狂気という。」

…ということは、「脱力」という同じ考えを繰り返しながら違う結果(より楽に弾きたい)を望むことは、狂気だと言えそうですね。。。

では、どうやったら違う結果(より楽に弾きたい)を望めるかというと、Inpuiry.によれば、例えばダイヤル式のカギを開けたければ、何通りもある組み合わせを一つ一つ【試して】みる必要があるわけで…

つまり、『00001』にいつまでもダイヤルを合わせたままで、
『開かないなあ、開かないなあ、』

と言っている暇があれば、さっさと『00002』にダイヤルを回したほうがいいということだ。
言い換えると…

つまり、「脱力」ばかりに固執して、
「上達しないなあ、上達しないなあ、」

と言っている暇があれば、さっさと「他の弾き方」を考えたほうがいいということだ。

…ということ。これが、より良いピアノの弾き方・楽にピアノを弾く方法の探し方の指針です。非常にシンプルですね、誰でも簡単にできます。ただ、ピアノ界での問題は、その「他の弾き方」を紹介しているところが非常に少ない。さらになぜか、ピアノ界では「脱力」という考え方が業界標準(?)になっているのが悲しい。。。

っというわけで、当ブログでは、(「脱力」ではない)いろんな弾き方をご紹介しています。是非、ご自身でいろんな弾き方を【試して】みたり【比較】してみたりして、ご自身に合った「より楽な・適切な弾き方」を探してみてください。

では。

P.S.
こういう話をするとたまに、「ピアノは、楽な弾き方を探すことが目的じゃない!」と批判する人がいます。でも、良い演奏をするために、「身体を痛めながら弾く」のと、「より楽な状態で弾く」の、どちらを目指すべきだと思われますか。まさか、良い演奏をするためには、「身体を痛めながら弾く」のも仕方がない…とでも、思っていないでしょうね?

我々がスパナを使うときだって、「スパナを楽に動かすこと」がスパナを使う目的ではないです。その目的は「ねじを外す(付ける)こと」ですよね。でも、その動作を如何に「より楽な状態」で行えるか、というのを追求することが、最終的にはその目的を果たすことにつながります(スパナを「より楽な状態」で扱うことができれば、疲れにくくなるため、より多くのねじを素早く、かつ、丁寧に外すことができる)。どうせ同じことをやるんだったら、「より楽」な方が断然いいです。

つまり、ピアノを「より楽な状態で弾く」方法を追求すること自体が、最終目的である「良い演奏をすること」につながる、ということ。実際、「より楽な状態で弾く」と、気持ちに余裕ができる、かつ、長時間演奏しても疲れないので、楽譜の細部にまで気を配りながら最後まで力尽きずに演奏することができるわけですから。

もう一度言います、どうせ同じことをやるんだったら、「より楽」な方が断然いいです。

*) どうやら、この名言はアインシュタインのものではないらしい。。。
参考: GIZMODE アインシュタインが言ってもいないのに広まってるアインシュタインの名言9つ

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