新ピアノ奏法1: 新ピアノ奏法を考案!
こんにちは、リトピです。
早速ですが、記事「コラム1: スポーツ界での脱力とは」を書いてから、実際にピアノにも応用してみたら、見事当てはまりました! 「新ピアノ奏法」という大風呂敷を広げたような形で始めますが、少なくとも自分には効果絶大でした。でも、あまりにも難しいので…簡略化できているかわかりませんが、説明頑張ってみます。
コンセプト: 打鍵時に利用する力・エネルギーをすべて、鍵盤・ハンマーに与える
コンセプトはこんな感じ。我々が鍵盤に加えた力が、全て鍵盤自身とハンマーに受け渡せれば、無駄な力がどこにも消費されることがなく、ピアノの弦を揺らすエネルギーにスムーズに変換され、一番きれいな音が出るはず。(ここでの「無駄な力」は、「ピアノの鍵盤やハンマーに加えた力を受け渡しきれず、別のところで消費されてしまう余分な力」という正しい意味) しかも、このとき打鍵する側が受ける力(反射)はゼロになるので、ピアノを弾くのがとっても楽になります。
これは「脱力」とは全く違う考え方でしょう。それに近い言葉にするならば「打鍵する側が受ける力(反射)をゼロ」にしろ、ということですが、知りたいのはその方法。うーん、やはり「脱力」はアドバイスとして何の役にも立たないですね。。。
キーワードは「インピーダンスマッチング」
どっかで見たキーワードですね(笑)。これを今度はピアノに応用してみましょう。
回路図と照らし合わせると図1のような感じ。(今回もかなりラフですので、全然厳密ではありませんが、イメージとして捉えてください)
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図1. ピアノの打鍵メカニズムを簡易的な回路図にした場合 |
- V = 打鍵力
- r = 指が受ける負担
- PF = 指が受けるエネルギー
- IF = 打鍵スピード
- IK = 鍵盤のスピード
- RK = 鍵盤の動かしにくさ
- PK = 鍵盤が受けるエネルギー
- PH = ハンマーが受けるエネルギー
さて、コンセプトである「打鍵時のエネルギーをすべて、鍵盤・ハンマーに与える」を実現するには、記事「コラム1: スポーツ界での脱力とは」でお話ししたように、インピーダンスマッチング、つまり、内部抵抗(指が受ける負担)と負荷(鍵盤の動かしにくさ)が等しくなければいけません。厄介なのは、負荷である鍵盤の動かしにくさが、一定の値ではなく、出したい音量の大きさ(打鍵の強さ)と打鍵時間で変わることでしょう。
ここからは、まだ私の推測段階です。恐らく、ピアノの負荷、つまり「鍵盤の動かしにくさ」は図2のような感じになると推測しています。
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図21. 加速度が一定だった場合の「鍵盤の動かしにくさ」と打鍵時間 「鍵盤の動かしにくさ」は出したいピアノの音量によって変わると推測。 |
- 慣性の法則より、鍵盤が静止し続けようとする力(抵抗力)が働く。(鍵盤がしなる、とも言う?)
pの場合は、動かそうとする力が小さいため、慣性の法則による抵抗力が弱い - 鍵盤が加速するので、運動エネルギーが発生。運動エネルギー は速度の2乗で大きくなるので、鍵盤の動かしにくさは速度の2乗に反比例する(と予想)
- 打鍵終了時。鍵盤が底に当たるので、鍵盤の動かしにくさは無限大に
鍵盤との「インピーダンスマッチング」を取るために
さて、負荷「鍵盤の動かしにくさ」の変化具合はイメージできました。次は、内部抵抗「指が受ける負担」をそれに合わせるわけですが…私が推測するに、内部抵抗「指が受ける負担」は打鍵力と打鍵スピードがかかわっています。この2つを調節することで、内部抵抗「指が受ける負担」を変更でき、負荷「鍵盤の動かしにくさ」の変化に対応できるようになるはずです。
では、図1の回路図を再度見てみましょう。打鍵スピードであるIFは鍵盤のスピードであるIKと同じ導線でつながっています。つまり以下の関係式が成り立ちます。
そして、打鍵が終了したとき(図2の(3))は、負荷「鍵盤の動かしにくさ」が無限大になりますが、回路でいえば、断線と同じ意味となり、電流が流れなくなる、つまり鍵盤のスピードがゼロになります。なので、打鍵のスピードも直ちにゼロ(もちろん、「脱力」ではなく「しっかり腕を支える」)にしなければいけません。
「インピーダンスマッチング」の感覚の取得方法
どこかで、「鍵盤の重さ」を感じろ、ということを聞いたことがあるかもしれませんが、感覚はそれに近いかもしれません。 「鍵盤の重さ」はここでいう、負荷「鍵盤の動かしにくさ」です。これを感じられるときというのは、打鍵のスピードが若干鍵盤のスピードより速いときに感じられるものです。たぶんこれは、「インピーダンスマッチング」の感覚を得るにはよい指標かも。
完全な「インピーダンスマッチング」の取り方
ここまで来ると、本当にまだ憶測でしか話せないのですが、完全な「インピーダンスマッチング」は、変な話かもしれませんがその「鍵盤の重さ」すら感じないはずです。完全な「インピーダンスマッチング」が取れると、鍵盤に与えるエネルギーが全部鍵盤とハンマーに伝わるので、重さもなく、指と鍵盤が一体化している感覚を得るはず。
そして、恐らく、「鍵盤の重さ」を感じようた時点で、究極の「インピーダンスマッチング」は絶対に取れません。理由は2つあります。 1つは、「鍵盤の重さ」を感じてしまった時点で、鍵盤からの力(反射)が発生しているため、その打鍵は、完全な「インピーダンスマッチング」ではありません。
そしてもう1つ、「鍵盤の重さ」を感じたいという行為。つまり、打鍵時に関するフィードバックを得ようとする行為ですが、それはダメです。なぜなら、人間の感覚はずさんなため)、フィードバッグ自体あてになりません。なお、書籍『音楽家のためのアレクサンダー・テクニーク入門』では、以下のことを推奨しています。
概念形成 → 抑制 → 方向性 → 行為これをわかりやすくすると…
考える → 間違った考えを捨てる → 再び考える → 演奏するとのことですが、今回の「インピーダンスマッチング」の考えに応用すると…
新しいピアノ奏法の名前
ふぅ、今回はとっても長かったうえに、内容まで複雑化してしまいました。。。現状、私の持っている知識では、この理論をもっと簡単に説明するのは難しそうだな。。。
さて、新しいピアノ奏法が考案された、ということで、市場に浸透するように名前を考えなきゃですね。ここは素直に…
…絶対流行らないだろうな、うん。。。でも「脱力」という言葉よりも間違いなく、そして一人歩きすることなく、伝えたい人に伝わるワードであることは確実でしょう。でも、もっとわかりやすく解説できるようになってから再度考えます。 この連載を続けるかわかりませんが…少しずつパートごとに分けて詳細でも書いていこうかな。。。
では。
最近貴サイトを発見し、拝読している者です。私は大人になってからピアノを始めたのですが、脱力しなさい、とか、独立が大事、という言葉にモヤモヤとした疑問を感じていました。なんだかうまく煙に巻かれたようで、スッキリしなかったのですが、この記事を拝読し、腑に落ちた気がします。
返信削除この記事のテーマであるインピーダンスマッチング。ド文系ゆえ正直よくわかりません(←)が、とても画期的な理論だと思います。ピアノ関係の友人が言っていたのですが、彼曰く、「指が鍵盤に吸い付く感じがする」のだそうです。これはまさにこの記事の
完全な「インピーダンスマッチング」の取り方
にて述べられていることではないでしょうか。
指導者とて人間ですから、自分の体の使い方を説明する際適切な言葉を選択できていない恐れもあると思います。ですので、必ずしも言葉を鵜呑みにしてはならないという考えに至ることができました。貴サイトのおかげです。
これからも刺激的な記事と、それを基にした練習ができるのを楽しみにしています。
閲覧 & コメントありがとうございます。
削除確かに、「脱力」や「独立」は【煙に巻かれた感じ】がしますよね。。。私の記事で少しでもスッキリしていただけたのであれば幸いです。
「インピーダンスマッチング」について。
言葉や理論は難しいですが、実は【我々が日々感じていること】そのものを表しています。実は、ゴルフのクラブやテニスのラケットなどの設計に、この理論が用いているそうです。
参考: http://www.eonet.ne.jp/~tomitamo/O22zmatching.htm
また、その友人のセリフである「指が鍵盤に吸い付く感じがする」というのは、おっしゃる通り、「インピーダンスマッチング」が取れた状態です。…と言うことは簡単なのですが、実際にどうすればその状態が得られるの?というのはまだ文章化するのが難しいと感じています(頭ではわかっているのですが、どう言えばいいのかがわからないんです…)。
嬉しいお言葉、ありがとうございます。今後も、タメになる記事を皆様にご提供できるよう、頑張りますので、よろしくお願いいたします(かなりの不定期ですが、温かい目で見ていただければ幸いです)。