お悩み相談室7: ピアノの練習方法を教えてほしいのですが…その1

公開日: 2015年11月17日火曜日 ピアノ 持論

こんにちは、リトピです。

さて、今回の「お悩み相談室」の内容は…意外と濃い内容になりそうなので2部構成にしています。

悩み7: ピアノの練習方法を教えてください。

もしくは、「難しいフレーズの練習方法を教えてください。」というのでもOKです。今回はその導入部。私も毎度、どう練習すれば一番効率がいいか、に悩んでおります。

メトロノームは正義か悪か

よく練習方法で、「メトロノームを使って、テンポゆっくりから練習し始めて、少しずつ速くしていきましょう。」「何度も何度も繰り返し練習しましょう。」と、いうようなアドバイスを聞きますね。 大半の人がそのように練習し、弾けなかった曲を弾けるようにしてきたと思います。もちろん、私もそうやって練習していた時期があるので、この効果が絶大であることは、私も納得しています。

でも…そういう練習を重ねて指定のテンポで弾けるようになった方、

どうして / どうやって速く弾けるようになったか、具体的に説明できますか?

これは、速く弾けるようにするための練習方法を聞いているのではなく、アナタの身体にどういう変化があったから速く弾けるようになったのか。ということを聞いています。だって、最初は弾けなかったわけでしょ?その最初の身体の使い方と今の身体の使い方の違いは何?ということです。

繰り返しメトロノーム等で機械的に練習してた場合、たぶん具体的な説明はできないはず。 でも、それって本来はおかしいでしょ。だって、自分の身体だよ。 えっ、「脱力」ができるようになったから、だって?ぉぃぉぃ、それは、速く弾けるようになったときの一種の(ずさんな感覚意識が生み出した)「結果」であって、速く弾けるようになった「理由」ではないですよ。(詳細は記事「番外編1: なぜ人は「脱力」できたと思うのか」を参照)

自分がどうやって動かしているか、を知らなくても、弾けなかったところが弾けるようになってしまう、それが機械的練習の恐ろしいところ。速いパッセージを弾けるようになった背景にはそれなりの理由がキチンとあるんです。(詳細は記事「お悩み相談室3: 速いパッセージが弾けないのですが…」を参照)

大事なのは「習慣」の強化ではなく「筋感覚」の強化

ちょっとコチラをお読みください。【武井壮がTBSラジオ「たまむすび」で語っていた「スポーツが短期間で上達するコツ」】だそうです。以下、武井壮さんのセリフ。

「目をつぶって腕を真横に上げましょう」と。で、上げてみるとタモリさんはちょっと上に上がってたんですね、真横よりも。でも、ほとんどの人が、トップアスリートを僕、指導したりしてますけど、トップアスリートでも出来ないんですよ。

(中略)

ズレてんだけど、反復練習すごいやったからそのズレを打ち消すくらいその技術の精度が高まってるだけで。トップアスリートってみんなそうですけど、他のスポーツやらしたら素人じゃないですか。でも、これっておかしくないすか、と。スポーツずっとやって頭のなかで思ったことをやろうとして練習してんのに、それがあんま育ってないってことじゃないですか。要は育ってんのは反復練習した技術だけってことじゃないですか。これってもったいないな、と。すごいアスリートにとっては僕、損失だと思ってんすよ。だけどもいまみたいな基本的な、ただ自分の身体を頭でそう思ったらそう動かせるって能力は応用性を生むんすよ。
(2014年の記事: 「僕はスポーツの練習じゃなくて”武井壮を動かす練習”をしている」の一部抜粋)

実は、スゴイいいこと言っています。「反復練習すごいやったからそのズレを打ち消すくらいその技術の精度が高まってるだけ」、つまり、反復運動は単に、ある動作の「習慣」を鍛えているだけ。本当に必要なのは、応用性を生む「ただ自分の身体を頭でそう思ったらそう動かせるって能力」を鍛えることだ、ということでしょう。

これ、もうちょっと具体的な言葉に落としてみましょう。いきなりですが、アナタの持つ第六感の力を、今ここで目覚めさせます。 まず手を頭の後ろにもっていきましょう。。。次に、今アナタの手はどういう状態(握っている?開いている?など)か、見ずに、聞かずに、触らずに、舐めずに、嗅がずに、把握してみてください。

把握できましたよね?おめでとうございます、アナタの第六感が開花しました!!…とにかく、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を使わなくても、手の状態がどういう風になっているか、簡単に把握できたと思います。これは人間にもともと備わっている「筋感覚」を使っているんですが、「アレクサンダー・テクニーク」では、この感覚を人間の第六感と呼んでいます。「筋感覚」とは…

筋肉感覚
筋肉の収縮や緊張の状況を知覚する感覚。筋紡錘(きんぼうすい)・腱紡錘(けんぼうすい)から刺激が反射的に中枢神経に伝えられて生じる、位置や運動の感覚。筋覚。
出典: デジタル大辞泉
と、いう意味と同義です。武井壮さんが言っていた「目をつぶって腕を真横に上げましょう」という動作、この「筋感覚」(位置や運動の感覚)が鍛えられてくると、キチンと真横に向けられるようになります。記事内で言っていた「武井壮を動かす練習」、つまり「ただ自分の身体を頭でそう思ったらそう動かせるって能力」を鍛える、というのは、この「筋感覚」を鍛えていたに違いないでしょう。

これ、もしかしたらピアノの練習でも言えることかもしれない。だって、武井壮さんが言うように、ピアノだって、ある曲 / あるフレーズだけが弾ける、ってものすごくもったいない。せっかくなんだから、ピアノ練習の過程で、ピアノ以外のことにも応用できるように成長できなきゃ。

「筋感覚」の強化するピアノの練習法: 導入部

ピアノ練習でよく言われる、「弾けないところはゆっくり&反復練習」は、これは単に「習慣」を強化させているだけではないだろうか。もちろん、武井壮さんが言うように「反復練習すごいやったからそのズレを打ち消すくらいその技術の精度が高まって」くるので、その部分の演奏は良くなります。でも、他のフレーズや別の曲には(だけでなくピアノ以外のことにも)活かせない。これ、確かにもったいないですね。。。

また、反復練習は「曲の一部」にしか焦点を当てていない、ということも問題かも。確かに、「曲が弾けるようになる」=「その曲の中で一番難しいフレーズが弾けるようになる」に近いかもしれませんが、本来の最終目的は「難しいフレーズ」が弾けるようになることではないはず。これでは、難しいフレーズだけが浮いて聴こえてしまうかもしれません。それって音楽的にどうなんですかね。。。

それに、反復練習によって「習慣」が強化されることもよくないでしょう。正しくない弾き方で機械的に練習していても、「反復練習すごいやったからそのズレを打ち消すくらいその技術の精度が高まって」くるだけなので、弾けるようにはなりますが、正しくない弾き方を続けると、確実に身体を壊します。

じゃ、「反復練習」という「習慣」を鍛える行為をやめるとして、どうやったら難しいフレーズを弾けるようにすればいいの?ということですが、大事なのは「筋感覚」を鍛えること。つまり、自分の意識を単に「難しいフレーズを弾けるようにしたい」ではなく、そういった難しいフレーズ弾けるようにするには「自分の身体をどう動かせばいいのか」に向けること、だと思います。

自分の「筋感覚」を鍛える方向に意識を向けるとどうなるか。今の実力では、自分はどのくらいの速度でこの曲 / フレーズを弾けるのか、どう身体を動かせばこのフレーズを速く弾けるように出来るのか、から考えが始まるはずです。身体を「機械的に動かす」のがいいのか、「能動的に動かす」のがいいのか、一度考えてみるといいかもしれないですね。

具体的な「筋感覚」の強化するピアノの練習法

これはまた後日、「お悩み相談室7: ピアノの練習方法を教えてほしいのですが…その2」にて。ただ、上記の意識(「筋感覚」を鍛える)を持って練習するだけでも、ピアノが上達するだけでなく、応用性を生む「ただ自分の身体を頭でそう思ったらそう動かせるって能力」が鍛えられ、今後の人生が良い方向に変わるかも。

では

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8 件のコメント :

  1. 「筋感覚」を鍛えるというフレーズが興味深く、最後まで読ませていただきました。
    続きにあたる「その2」もぜひ読んでみたいです。 

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    1. 記事の閲覧、誠にありがとうございます。
      「その2」については、いつになるかわかりませんが、書けるよう検討してみます!

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  2. 色々なピアノ記事をご掲載いただきありがとうございます。興味深く拝見しました。また、お勧めの書籍を読み漁ってみたいと思います。

    ピアノを弾く際にはどのような教材がいいかにつきましても、
    もしもご見解をお持ちでしたら、ご紹介いただけますと幸いです。

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    1. 記事の閲覧およびコメントありがとうございます!
      本サイトで紹介している書籍は本当に質の高いものばかりですので、きっとアナタ様の為になると思います。

      ただ、ピアノを弾く際の教材については、残念ながら私は知見がなく、現在ご紹介できるものがございません。お力添えできず大変申し訳ありません。

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    2. ご回答ありがとうございます。
      正しい理論であっても、適切なステップアップの道筋が示されていないとなかなか広まりにくいものかと思います。ショパン流のピアニズムが、少なくとも初学者には広がっていない気がしますが、その理由もそこにある気がしています。古屋先生の教育活動で、何らかの教材が発売されたら嬉しいですが、あったとしても先の話になりそうですね。ひとまず、シャンドールを読んでみようと思います。

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    3. おっしゃる通りだと思います。
      どんなに理論が正しかろうとも、それを浸透させるための手法(おっしゃられている「適切なステップっプの道筋」など)がないと、なかなか広まらないと私も思います。

      ただ一応、古屋先生らの研究チーム((株)ソニーコンピュータサイエンス研究所)は【Music Excellence Project】というプロジェクトを立ち上げているので、そのプロジェクトによって、こういった科学的アプローチの考え方が少しずつ浸透して広まっていくだろうと願っています。

      シャンドールは紹介した書籍の中では読みやすい方だと思うのでぜひお読みください!!

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    4. シャンドールもミスタッチも絶版なようです。世知辛いですね;

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    5. 各出版社のHP見てきました。
      ああぁ……ホントだ。。。こんな良書が絶版だなんて。。。結構ショックです。

      情報提供ありがとうございます。一応『成功する音楽家の新習慣』など、最近出版されている良書はまだまだありますが、次の良書もどんどん探す必要がありそうです。

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