お悩み相談室1: 薬指、小指が弱くて弾きにくいのですが…

公開日: 2015年10月19日月曜日 ピアノ 持論

こんにちは、リトピです。

今回の連載「お悩み相談室」は、よくピアノ初心者が陥る悩みを理系の独自目線でズバッと解決するコーナーです。 早速、一つ目のお悩みにお答えしましょう。

悩み1. 薬指と小指が弱いくて弾きにくい

初心者に限らず、ピアノ奏者なら誰しもが悩むトピックだと思います。 恐らく、薬指と小指の神経が親指から中指までの他の3つの指の神経とは違う、というところまでは知っている方もいらっしゃるでしょう。もしくは…筋がつながっていて、独立できるようにその筋を切る人もいる、なんて話も聞いたことがあるでしょう。

薬指・小指で弾きにくいと嘆くあなたに、「脱力」信者や重力奏法を謳う人々はきっとこう答えるでしょう。

  1. A1. 「脱力」してください。あとは、練習あるのみです!
  2. A2. 弱いのは鍛えが足りないからです。筋トレならぬ指トレから始めましょう。
フザケんなっ!

って感じですよね。こっちは真剣に悩んでるのに、全然解決になってない。 でも、薬指や小指だけにフォーカスしたあなたはまだましです。 だって、彼らはすべての指が弱い、すべての指が鍛える対象だと言っているのですから。。。 それに、 「脱力」信者は重力を自在に操り重力奏法を謳う人たちは腕の質量をいとも簡単に変化させることができる人たち のようですから、我々凡人は彼らの言っていることを信じてはいけません。

力が弱い、弾きにくいと感じるのは一種の警告と捉えるべきでしょう。 薬指や小指は他の指と違って動かしにくいと感じているのは、薬指や小指の神経の繋がりが他の指とは違うということを理解しながらも、他の指と同じ動きを求めているからではないですか?

その考え、薬指や小指にとっては、非常にツライんです。実は、指の神経のつながりは、親指から薬指の半分までが正中神経、薬指の半分と小指が尺骨神経の支配領域となっています (図1を参照)。この2つの神経支配領域が重なっている薬指は、他の指につられて動かされやすいのですが、実は人間としてごく当たり前のことだったんです。(詳しくは『筋骨格系のキネシオロジー』, 医歯薬出版, pp.168-169参照)

図1: 右の手のひらからみた2つの神経支配領
(a) 尺骨神経の支配領域、(b) 正中神経の支配領域。
人間の構造としてそれが当たり前なのに、頑張って他の指と同じように動かそうだなんてそもそも無理な話。身体に無理なことをすれば、身体の感覚がまともらな、そういった警告を発するのは当然でしょう。 そして、前回の記事「なぜ「脱力」は敵なのか5: 身体は鍛えるな。感覚を鍛えろ。」でお話ししたように、その警告を無視して薬指や小指を鍛えることは絶対にしてはいけません。

それでもまだ鍛えたいのであれば...

俺は人間をやめるぞ!◯。◯。ーーッ!!

とでも叫んでおいてください。あなたが人間である限り、その神経構造は変えられませんから。

それはさておき。では、どうすればこの悩みを解決できるのでしょうか。 簡単に答えるとこうです。心理学者アドラーは言います。

重要なことは人が何を持って生まれたかではなく、与えられたものをどう使いこなすかである。
つまり、人である限り、薬指、小指が弱いのは当たり前。他の指と同じように動かしたい、という無い物ねだりではなく、与えられたものをどう使うか、で勝負しましょう!、ということです。 以下に具体的な方法として、準備と2つの解決策を挙げておきます。

準備: 手首、腕、肩の「脱力」禁止!

もちろん、どの動作においても「脱力」なんてありえませんが、念のため。だって、指先をコントロールするための土台 (肩、腕、手首)が「脱力」によって崩されてた状態で、弾きにくいと感じている部分を動かせるようになると思いますか?しかも、特に肩の「脱力」が一番危ないです。腕の神経や血管は鎖骨の下を通っているのはご存知ですか?肩の「脱力」によって肩が下げられると、それらを圧迫してしまい、その先の指が動かしにくくなるならまだしも (まぁ、それも本末転倒ですが)、それが慢性化してしまったら...(その状態を胸郭出口症候群、と呼ぶそうです("日本整形外科学会"参照))。 ですので、もしピアノをながーく続けたいのであれば、絶対に「脱力」はしないでください。

解決策1. 鍵盤に力をかけ続けている時間を長くする

薬指や小指が弱いと感じる理由の一つは、薬指や小指でピアノを弾いたときの音量が他の指より小さいことでしょう。だって、他の指より力が弱いわけですから。 この場合、記事「本当は怖い重力奏法5: ピアノの音量を決める本当の要素」でお話しした力積の考え方がとても役立ちます。

薬指や小指の力Fを変えずに(鍛えずに)ピアノの音量を上げるには、他の指より鍵盤に力をかけ続けている時間を長くするだけです。 テンポの遅い曲や、比較的音量がいらないフレーズなら、効果を発揮するでしょう。もっと音量がほしい場合や、速いパッセージを弾きたい場合は次の対処法へどうぞ。

解決策2. 指、手首以外の部位の動作を適度に組み合わせ、鍵盤にかける力を増大させる

薬指や小指が弾きにくいと感じるタイミングは、薬指や小指を含んで速いパッセージを弾こうとしたとき、ではないでしょうか。 この場合は、上記と同様に、鍵盤に力をかけ続けている時間を長くしてしまっては、速いパッセージに対応できません。ここで、鍵盤にかける力を増やさなければならないのですが、薬指や小指を鍛える以外に力を増やす方法があります。それは、他の部位を用いて、薬指や小指だけでは対応できない力を補えばよいです。これぞ身体の「コーディネート」!

例えば、薬指と小指のトリル。腕の回転も味方につけることで、驚くほど楽に弾けるはずです。 (ただし、身体のマッピングが悪いと逆効果。回転するときの軸が重要なのですが、詳細は後ほど。) なお、指自体のコントロール・スピードは、神経伝達の速さに依存します。正しく毎日ピアノを弾いていれば勝手に身に付いてきますので、特に気にする必要はないでしょう。

神経伝達の発達については残念ながら「急がば回れ」です。「脱力」信者や重量奏法を謳う人たちによるアヤシイ練習法などに惑わされないように気を付けましょう。ただ、イメージトレーニングするだけでも、神経に良い刺激を与えるみたい(『ピアニストの脳を科学する』, 春秋社, p.22-23参照)なので、忙しくてピアノが弾けないときや、ピアノから離れていても、そんなに心配しなくても大丈夫そうですね。

薬指や小指が思うように動かず、悩んでいる方々がいましたら、ぜひ上記2つの解決策を試してみてください。少しでも皆様の悩み解消につながれば幸いです。

では。

P.S.
一応念のため。「脱力」するな = 力を入れろ、というわけではありません。誤解のないように。。。

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2 件のコメント :

  1. 「脱力しろ」を曖昧で無意味なアドバイスだと批判してるのに
    「脱力するな」とアドバイスするのは意味不明。
    「誤解のないように」なんて言い訳するくらいなら、
    そんな無意味な言葉要りませんよ。
    屁理屈や無意味な常識批判が多くて、そのくせ役に立つ記述はあまり見当たらない。
    なんだかなぁという感じ。

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    1. コメントありがとうございます。
      「脱力」が曖昧で意味不明なアドバイスだから、練習の準備として【「脱力」なんて考えるな】という意味合いで使わせていただいたのですが、それでも意味不明でしょうか?

      また、私の主張が「屁理屈」だと言うのであれば…アナタ様のいう【常識】には「理屈」があるということを、まずは示していただきたい。わざわざそうやって批判されるということは、アナタ様には、この私の「無意味な常識批判」に反論するだけの、さぞかし立派な・論理的な根拠をお持ちなのでしょう。少なくとも、私にはその【常識】に賛同するための情報・根拠は集められませんでした。アナタ様の持つその根拠には興味があります、ご提示を楽しみにしております。

      P.S.
      根拠のない反論は、逆にそちらが「屁理屈」だと言われかねないのでお気を付けください。

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