お悩み相談室5: 演奏中走ってしまうのですが…

公開日: 2015年10月23日金曜日 ピアノ 持論

こんにちは、リトピです。

さて、今回の「お悩み相談室」の内容はこちら。

悩み5: 走ってしまう

これ、私もよく悩む内容です。つい演奏速度が上がってしまう。。。 気付いた時には演奏速度が速くなっていて...いつどこで速度が上がっているのか、自分で発見するのはとても難しいですよね。 理系的目線で見ればどこで走っているかを発見することができるのですが、 今回ばかりは、科学や物理学ではどうにもズバッと解決できない部分があります。 それは、あなた自身の気持ちです。スポーツでは技術だけじゃなく、メンタル面も大事、とよく言われますが、 ピアノでもそうなんです。特に「走ってしまう」という悩みについては。と、いうわけで、今回は精神論も語らせていただきます。

走っているからうまく弾けない?

まずは、精神面からお話しします。走ってしまう、という悩みを持つアナタ、 もしかして「走らなければ上手に弾けるのに...」と思っていませんか? 自分はピアノが下手だ、という劣等感があまりにも強すぎると、時としてそういう考えに陥ってしまうこともあるでしょう。 そして、

ピアノが下手なのは、ただ単に演奏中に走るだけだからだ。

と思い、妙に安心するわけです。じゃあ、演奏中に走らなくなったら、ピアノが上手に弾けるんですか?恐らく、そういう風に考える彼らは、言っている悩みが解決し、演奏中に走らなくなったとしても、また違う要因を見つけて、同じように嘆くでしょう。

下手な理由を見つけては嘆くだけ嘆いて、その原因さえなければオレは上手なんだ!と主張し、そういった可能性の中だけで生きることをで、下手な自分を守ろうとする。それって、言う分には楽ですが、こう考えてしまっては、解決するものも解決しなくなりますよね...(これは、アドラー心理学では「劣等コンプレックス」と呼びます。)

ここで間違ってはいけないのは、劣等感自身は悪くない、ということです。ピアノが下手だ、と思う気持ちは、もっと上手になろうという向上心を得られるので。ただ、上記のように拗らせすぎてはいけません。上記のように考えている方はキチンと自分と向き合う時間を作る必要があると思います。ピアノ、下手でいいじゃないですか。音楽って音を楽しむって書くんでしょ?へたっぴな自分を受け入れましょうよ。(このことをアドラー心理学では「自己受容」と呼びます。)

そんなへたっぴな自分を受け入れることで、まずは演奏に対する余裕が出てくるはずです。これで客観的に自分の演奏を評価できるようになります。そこで、ようやく理系的目線の出番!次へ移りましょう。

力積から考える

では、まずはどこで走るのかを解析します。以下の3つが主な原因です。

  1. 音符の長さをキチンととれてない (主にゆっくりなフレーズ)
  2. とるべき休符の長さが短すぎる (休符全般)
  3. 鍵盤を押す時間が短すぎる (主に難しくて速いパッセージ)
音符の長さや休符の長さについては、自分の演奏が客観的に見れるようになった時点で解決できます。打鍵後の時間や待機時間を長くすればいいだけですから。

また、「走る部分 = 一つ、あるいは複数の音の出ている時間が極端に短い部分」と考えれば、鍵盤を押す時間が短すぎる、というのも走る原因になるでしょう。その場合の解決方法は2つあります。

a. 走る部分の音量が周りに比べて小さい場合

速いパッセージを弾こうとすると、必然的に鍵盤を押す時間を短くなりますが、同じ力で鍵盤を押していれば、音量が下がるのは、記事「お悩み相談室3: 速いパッセージが弾けないのですが…」でお話しした通りですね。 この場合、走る個所では図1のように単に鍵盤に力をかけている時間 (図1ではオレンジの部分)だけが短くなっているだけなので、その時間を (図1の青色の部分と同じように)長くするだけで解決しますね。

図1: 走る個所を含むフレーズ1。
オレンジの枠で打鍵時間が短いため、その部分だけ演奏速度が上がり、音量が小さくなる。

b. 走る部分の鍵盤を押す力が強い場合

走っていても周りの音量が変わらないのであれば、走るフレーズで図2のように確実に力みすぎています。大抵そういったフレーズはそこまで力む必要はありません。打鍵時間を長くすれば、鍵盤を押す力を抑えられます。つまり、打鍵に使う力を温存できるので、落ち着いて演奏できるため、演奏の加速を止めることができます。
図2: 走る個所を含むフレーズ2。
力みすぎてコントロールが効かなくなっている例。
ただ、ここで力みすぎているからといって、「脱力」するのはもちろんダメですよ。大事なのは身体・筋肉の「コーディネート」。恐らく、打鍵を強くするため、指を固めすぎているか、前腕の回転力を利用しすぎているはずです。それらの力を抑え、打鍵時間を長くすることに意識を向けるべきでしょう。

では

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2 件のコメント :

  1. こんにちは。
    匿名で失礼致します。
    私の考察も聞いて下さい。
    私が気になっている、とあるピアノ科の学生さんがいらっしゃいます。
    その子は、時々走ってしまうのです。
    その時に私が考えるのは、
    *バッハのインヴェンションの中で例に取れる、似ているフレーズを繰り返す音楽の性質を理解していない。
    *前述の似ているフレーズが出てきた時に、一回目と二回目以降とでは明らかにリズムやアクセントの位置などが異なっているが、それを問題視する能力が無い。
    *藝大和声でいう、カンマとピリオドを意識していない。
    *また、カンマとピリオドが無い場所で可笑しな減速をしてしまっている。
    という所です。
    その子は走ってしまうだけではなく、音楽が全体的に歪んでいます。
    私も音楽学部ではないので、突っ込んだ話は出来ません。
    しかし、明らかに一部のピアノ科の生徒は可笑しいと思います。

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    1. 興味深い考察、ありがとうございます。確かに、「音楽の流れそのものを理解していない」と、演奏中に走りや減速(もとい、音楽の歪みが不自然な速度変化として現れる)があるのかもしれませんね。

      これらは、他言語を話すときも同じような気がしますね。どこでフレーズの区切りがあるかを意識せずに話す(もとい、暗記したフレーズを理解もせずただ単に読み上げるだけだ)と、会話の流れがあまりにも不自然で、聞き手側は非常に聞き取りにくいですからね。。。


      今後も、走る原因とその対策をいろいろと考えてみようと思います。コメント、ありがとうございました。

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